ITmedia NEWS > ネットの話題 >

OracleのエリソンCEO、ナイーブなプライバシー保護論に苦言 ジョブズ氏の思い出も新経済サミット2014

» 2014年04月09日 18時54分 公開
[山崎春奈,ITmedia]
photo Oracle ラリー・エリソンCEO

 内外のIT企業創業者らが集まる「新経済サミット2014」(主催:新経済連盟)が都内で開幕し、トップバッターとして米Oracleのラリー・エリソンCEOが基調講演した。エリソン氏はプライバシーをめぐるユーザーの過剰な反発に疑問を呈しつつ、今後の情報社会の発展について話した。

 エリソン氏は、米国の国家安全保障局(NSA)が国民の通話データなどを収集・監視していた問題が大きな議論を呼んでいることを挙げ、政府や大企業が、ユーザーの家族関係やファイナンスに関するプライバシー情報を多数抱えていることに対し、過剰とも言える反発がある、と苦言を呈した。

 「例えば火も航空機も危険な使い方ができるが、便利な側面にフォーカスされており、規制しようという動きはない」「全てのテクノロジーは“悪用される可能性がある”ので、それだけで必ずしも悪とは言えず、むしろ“これまで悪用されてない”ことの方が重要。民主主義国家に生きている我々は、間違ったあり方は規制し、社会をよりよくするために活用することができる」と自説を展開した。

photo 楽天 三木谷浩史社長

 後半は楽天の三木谷浩史社長がインタビュアーとなり意見を交換した。「プライバシーに対して保守的な意識の人をどう変えていけるか」という質問には「最初から全員に適応させるのではなく、オプトイン/アウトを選択できる個人の権利として訴求することでは。社会が便利に安全になることを見せれば世論はついてくる。Facebookには喜んでプライバシー情報を提供するのは“見返り”として家族や友人と交流できる楽しさがあるから」と答えた。

 何度も大きな買収を繰り返して成長してきたOracle。文化を統合する際に心がけたことは? という質問には、「画一的にルールを決めず、企業ごとに何を統合し、何をしないのかを考えるさじ加減」と話し、三木谷社長が「参考にします」と答えるシーンも。

 親交の深かった故スティーブ・ジョブス氏とのエピソードとして、Appleの主力商品がソフトウェアだった時代に「もうMicrosoftとの競争に疲れた、ソニーと競争する方がきっと面白い」と話していたと明かした。「誰もがAppleはもうだめだと思った時期があった。ソフトウェアの優位性がある上で、ハード開発に挑んだ結果が今」と既存の在り方にとらわれず成長する姿勢について話した。

 エリソン氏は日本庭園を愛する日本好き。東京に暮らし、働いた経験もある。「日本企業での経験で経営者としての働き方を身につけた気がする。長時間努力を惜しまないトレーニングになった」と話し、「このイベントが終わったら京都・南禅寺の自宅に帰ってゆっくりするつもり」と笑った。

 新経済サミットは新経済連盟(代表理事:三木谷浩史 楽天社長)が主催し、昨年に続き2回目。10日まで開かれ、米Yahoo!創業者のジェリー・ヤン氏らのほか、日本からはLINEの森川亮社長らがパネルディスカッションに参加する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.