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DeNA、遺伝子検査サービス「MYCODE」スタート 東大医科研と共同研究

» 2014年06月03日 19時59分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 ディー・エヌ・エー(DeNA)は6月3日、ヘルスケア分野に参入すると発表した。東京大学医科学研究所(医科研)との共同研究に基づき、7月下旬から一般向け遺伝子検査サービス「MYCODE」を始める。同種のサービスが増える中、東大医科研との提携に基づいた信頼性の高い分析を売りに、疾病リスクを知ることで病気の予防に関心を高めてもらうのが狙いとしている。

photo サービスの概要

 モバイルゲームなどネット上で事業展開してきたDeNAがヘルスケアや医療領域に踏み込んだ第1弾事業。100%出資の子会社「DeNAライフサイエンス」が主体となり、遺伝子の検査やユーザー情報の管理、検査結果の提供などを行う。

 掲げるのは、病気になってからケアする「Sickケア」から、健康を維持する「Healthケア」への転換。遺伝子検査で客観的に自分の体の状態を把握することで、具体的な行動の変化に結びつくことがメリットとしている。

 ユーザーはWebサイトから申し込み、送られてきたキットで検体を採取し、同社に送る。遺伝子検査は国内で実施し、がんや生活習慣病などの病気にかかるリスクのほか、太りやすさやアレルギーなどの体質についてのレポートを作成する。

 結果に基づいた病気予防や、健康向上のためのアドバイスコンテンツも提供する。希望者には専門家とのカウンセリングの機会を提供し、1度利用したユーザーには関連最新情報をアップデートしていくなど、健康に目を向けてもらうため、継続的にコミュニケーションする体制を整える予定という。サービスの詳細や価格帯などは今後発表する。

家族の闘病がきっかけ──南場取締役

 DeNAの南場智子取締役は「少子高齢化が進み、医療費や社会保障費は国として増加していく一方。政治家や行政に任せるだけでなく、民間でもできること、求められていることを」と考え、約1年かけて医科研の研究者とともに準備してきたという。

 世界でも同様のサービスが増えつつあるが、「MYCODE」の特徴として(1)学術的基盤に基づいた高品質で信頼できる分析、(2)日本人やアジア人に特化したエビデンスや予測モデルの蓄積、(3)ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)に配慮した安全性の高いサービス運営――の3つを挙げる。

photo DeNAと医科研、双方の強みを生かす

 東大との産学連携共同研究は、文科省と科学技術振興機構が推進する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に選ばれた。医科研による最新の研究成果を踏まえた精度の高い分析で検査結果を監修することで、サービス向上への貢献に加え、ユーザーからのフィードバックを元にした日本人の疾病リスクモデルの構築や、利用者の行動変化などを論文として発表し、世界に発信することを目指す。

 南場取締役は「私事になるが、自分がヘルスケアの分野に強く興味を抱いたのは家族が闘病したことが大きなきっかけ。どうして病気になってしまったのか、何か事前にできることはなかったか、兆候を見逃していたのでは――と看病する立場になってから悩んだ。健康な時に適切な情報を得ることで、日々少しずつ気をつけることができるはず」と、自身の経験を踏まえて事業の意義を語る。

 “究極の個人情報”である遺伝子を扱う安全性や、疾患の可能性を予告することで不安をあおる側面があるのではという懸念もある。医科研の清野宏所長は「残念ながら科学的知見の乏しい検査があるのも事実だが、だからこそ我々は業界の模範になるような信頼性の高いサービスを作っていきたい。日本全体の健康への意識向上はもちろん、ゲノム研究そのものの発展にもつながれば」と話している。

photo DeNA 南場智子取締役、東京大学医科学研究所 清野宏所長、宮野悟 ヒトゲノム解析センター長

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