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» 2014年08月15日 10時00分 UPDATE

“Nokiaの後”の時代を作る――同世代で切磋琢磨、世界を狙うフィンランドのスタートアップ事情 (1/2)

スマホゲームの分野を中心に、勢いづくフィンランドのスタートアップ業界。政府や先輩起業家によるアシストだけでなく、大学を拠点とする起業支援団体が精力的に活動しているのも成功の大きな要因だ。

[山崎春奈,ITmedia]

 フィンランド・ヘルシンキで毎年1度秋に行われる「Slush」。世界中から多くのスタートアップ企業や支援者、メディアが集い、参加者は7000人を超える欧州最大規模のイベントだ。

 この巨大イベントを運営する団体が大学のサークルに端を発する起業支援NPO「スタートアップ・サウナ」。「ヘルシンキをサンフランシスコやボストンに負けない勢いある都市にしたい」――若い世代が同世代間で盛り上げるフィンランドのスタートアップ事情を聞いた。

大学の片隅にコワーキング・スペース

 スタートアップ・サウナの拠点は、ヘルシンキからほど近いエスポーにあるアールト大学のキャンパス内。敷地の片隅にある赤茶色の平たい建物は、以前倉庫として利用されていたそうだ。

photo 概観は倉庫の「スタートアップ・サウナ」
photo イベントをする際はフロアを全面開放する

photo 学生以外も自由に利用できる
photo キッチンも併設。夏休み期間だが、奥の講堂ではセミナー中

 中はコワーキングスペースになっており、学生はもちろん、学外の人も自由に出入りし、電源やプロジェクタ、ホワイトボード、コーヒーメーカーや冷蔵庫のあるキッチンなどを自由に利用できる。起業家を招いた講演会や、ビジネスプランのピッチ、法律やマーケティングに関する講義など、年間100件ほどのイベントを開催し、交流を促進している。

 「何か新しいものにチャレンジしたい、と思った時に一緒にやる仲間を探しやすい環境があることはとても重要。エンジニア、マネジャー、デザイナー、それぞれの立場で得意なものを生かし、目的ややりたいことがなくても、まずは参加できることを意識している」(スタートアップ・サウナCEO ユホ・コッコラさん)

工学、経済、アートの交差点

photo アールト大学の教室。世界的建築家アルヴァ・アールトの名前を冠する同大学は建物の美しさで知られる

 コッコラさんの言葉には、スタートアップ・サウナの出自が関わっている。同団体の母体とも言えるアールト大学は、ヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ芸術デザイン大学の3つが合併して2010年に誕生した。

 異分野の融合を目指して作られた環境では、実際にさまざまなプロジェクトが始動し、学生たちはそれぞれの興味や専攻を生かして取り組んでいる。その1つがアントレプレナーシップを学ぶ同好会だった。

 当初は学生を中心に活動していたが、フィンランドのゲーム産業全体の盛り上がりも重なり、国内外の有望なスタートアップの発掘やメンタリング、コミュニティー作りを行う規模に成長した。大学を拠点に、世界的企業に成長した地元企業SupercellやRovio、政府機関も巻き込みながら若者の啓発に若者自身が関わっているのが特徴だ。

photo 昨年の「SLUSH」の様子

 集大成の1つが、スタートアップだけでなく投資家やメディアも巻き込んだ巨大イベント「Slush」。「雪解け水」を意味するこのイベントは年に1回開催されており、昨年11月は世界68カ国から1200社以上・7000人が集まった。SkypeやSound Cloudの創業者などが講演し、各国から政治家も訪れる。日本からはガンホー・オンライン・エンターテイメントの孫泰蔵会長や、ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子取締役などが登壇している。

 ヨーロッパで最大規模のイベントながら、運営は数百人の学生を中心に行う。オーガナイザーを務めるミキ・クーシさんは「世界で活躍する人に会える、直接教えを乞えるのは大きな刺激になっている」と話す。

 学生向けシリコンバレーのスタートアップ企業へのインターンなども実施しつつ、あくまで目指すのはヘルシンキやフィンランド、そして欧州全体を勢いづけること。土地や物価が高く人材競争も激しいシリコンバレーとは異なり、先輩経営者との距離も近く、政府による支援体制も充実したフィンランドで、競争相手ではなく仲間としてライバルと切磋琢磨できる環境を作りたいという。

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