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» 2014年10月03日 11時33分 UPDATE

同性カップルにも“普通”の結婚式を LGBT向けウェディング事業が目指す、支援とビジネスの両立

人生の幸せな1シーン「結婚式」。異性カップルなら当たり前のように行うこのイベントがセクシュアルマイノリティの人々にとっては難しい。同性愛者の結婚式を支援する事業を行うLetibeeに、国内での現状や今後の展望を聞いた。

[山崎春奈,ITmedia]

 家族や友人に囲まれ、祝福の言葉を浴びながら美しい衣装に身を包んで幸せそうに微笑む2人──日本で年間30万件以上行われている「結婚式」の1シーンだ。この何気ない人生の1ページが、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的少数者の総称)のカップルにとっては難しい。彼ら彼女らの結婚式や人生設計をサポートする事業を手がけるLetibeeの外山雄太さんに話を聞いた。

※ 本記事内で「LGBT」という表記は「セクシュアルマイノリティー」と同じ意味合いで使用しています。

photo トップページにはこれまで支援した同性カップルの結婚式写真が

 同性婚が認められていない日本では、LGBTのカップルが伴侶として将来を約束した場合、“普通”のカップルと異なる判断を強いられることは多い。法律的・社会的な面はもちろん、1つの象徴的な例が結婚式だ。式場もブライダル企業も、そもそも最初からゲイやレズビアンのカップルを想定していないケースがほとんどだという。

 外山さんがLGBTの結婚式支援を始めたのは2年前。当時は法人化しておらず、知り合いづてに出会った女性カップルを手伝う形でスタートした。「結婚式って幸せの象徴ですよね。当事者だけでなく、ストレート(異性愛者)の人も共感しやすいし、知らない人のものでもみんな笑顔になれる」(外山さん)

同性愛者の支援とビジネスの両立

 自身がゲイだと自覚したのは高校生の時だった。小さなころから女子と遊ぶことも多く“女の子っぽく”はあったが、「そもそも同性愛者という概念そのものがなかったので、自分がそうかもしれないなんて発想すらなかった」と子どものころを振り返る。

 高1で、男性の先輩に恋をした。紆余曲折あって思いが通じた後も、誰にも言えない2人だけの秘密だった。お互い彼女がいながら関係を保っていた時期もあったという。彼が大学に入学した後、女性の恋人を作ったのが別れるきっかけになった。「俺たち、いつまでもこうしていられないよ」――別れ際の一言が頭から離れなかった。

 「そんなこと言われると考えちゃうじゃないですか、自分が女だったらもしかしたら平和に続いてたかなって。どうして当たり前のように好きな人と一緒にいられないんだろう、誰にも言えずに隠れていなくちゃいけないんだろう、って辛くてずっと泣いてました」(外山さん)

photo 外山雄太さん

 この大失恋を機に少しずつ友人にカミングアウトを始めたが、これまで秘めていたことを改めて口に出すのは勇気が必要で、最初は「友達全員いなくなるんじゃないかと本気で怖かった」という。周囲の支えや理解もあり、上京し大学に入るころにはゲイであることを自分から言える程度になった。

 大学ではデザインのほか、ジェンダー論やLGBTマーケティングなども学ぶ中で、何らかの形で同性愛者の支援とビジネスの両立ができないかと考えるようになった。結婚式をターゲットにしたのは「海外の同性婚の映像を見て、いいなぁ楽しそう、と思った」というシンプルなきっかけだ。同じく同性愛者の友人を誘い、個人的なプロジェクトとして始めた。

式場が見つからない

 とはいえ、事態はそう簡単ではなかった。そもそも普通に結婚式を行うだけでも、ドレス、ヘアメイク、料理やケーキ、式の演出、来場者へのケアなど考えることは多い。結婚式のプロデュース経験があるわけでもなく、本人たちの希望を聞きながらぶつかる壁に1つずつ対応していく日々だった。

 そして最大の問題が「思うように式場が見つからない」。会場や企業によって対応は異なるが、同性カップルで結婚式を考えていると伝えると即座に「うちでは無理です」と返されることも少なくなかったという。担当者レベルで興味を持ったり応援してくれても「会社の方針でどうしても」と言われるケース、「法律上の婚姻関係が必要」と事実上異性婚のみを扱うケースなど、断られ方はさまざまだ。

 今でも、ホテルや結婚式場であれば8〜9割程度、レストランウエディングなどの小規模な会場でも半数程度は断られるという。特に、伝統ある建物や日本庭園があるところなどは難しいそうだ。ブライダル市場は少子化は進んでいるとはいえ、ある程度パッケージ化されたプランで安定しており、新しいことに挑戦するリスクが大きいのでは――と外山さんはみる。

大きな潜在需要

 セクシュアルマイノリティ向けの結婚式事業は「ニッチな分野」と評されることも多いが、数字を見るとインパクトは想像以上だ。日本におけるセクシュアルマイノリティの人口比率は5.2%・約20人に1人とされており、関東地方だけで200万人以上。6割にパートナーがいるとすると60万組超のカップルが成立している計算だ。可処分所得が高い人も多く、今は結婚式が選択肢として存在しないだけで潜在層需要は大きい。実際、同社の意識調査では同性カップルの約60%が「今すぐ挙げたい」「いつか挙げたい」と答えているという。

 「海外ではLGBTマーケティングが一般的になっているが、日本はまだ市場自体が成立していない現状。結婚式という分かりやすいところからニーズと可能性があることを示していきたい。セクシュアルマイノリティの人々に向けたチャンスや商品を提供することが当たり前になっていけば」(外山さん)

photo 同性のパートナーと生活する時に生じる問題とその解決策をリーフレットにまとめて配布している
photo 「同性のカップルの不動産」の項目ではローンを組んで物件を購入するには? などを解説

 結婚式を入り口に当事者と関わることで、法律や保険、不動産など人生設計に関わる部分についての問題解決・啓発にもつなげている。パートナーの怪我や病気、事故などの際に戸籍上の関係がなくても同等の立場を証明できる「任意後見制度」、物件を購入するときローンを組むにはどうしたらいいか――など、一般的な婚姻とは異なる部分についてまとめた冊子を制作し、Webサイト「Letibee LIFE」でも情報を発信している。「まだまだ社会的に整っていない部分は当然あるが、法や制度を変わるのを待っていても仕方がない。今できる最善のやり方を伝えることは大切」と話す。

 事業を行う上でこだわっているのは、同性愛者が身近にいない(あるいは知らない)人、昔の外山さんのようにに誰にも言えずに抱え込んでいる人など「当事者の外側にどう届けるか」だ。リアルな幸せの形を、写真や映像からダイレクトに伝えられる結婚式のインパクトは強い。支援団体ではなく法人という形で、特別知識がない人にも意義が伝わる結婚式を事業の柱として選んだ理由の大きな1つだ。一般企業や結婚式場での社員・スタッフ向けのLGBT研修など、実際に当事者に接したり対応する上で、理解を深める働きかけも行っている。

 「国、企業、個人の意識、どこかがピンポイントで変わってもだめで、それぞれの分野で問題意識を感じている人をつなげていくことがよりよい社会環境につながると思う。同性愛者自身はもちろん、異なる立場で応援する人も含めて思いある人が集う“案内所”に育てたい」(外山さん)

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