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腕時計から「リストファッション」へ 1万円台の国産カスタム腕時計「Knot」の狙い連載・クラウドファンディング「成立」のその後(1/3 ページ)

» 2015年01月20日 09時00分 公開
[坊垣佳奈(Makuake),ITmedia]

 日本初の腕時計が生まれたのはいつだかご存じだろうか。その答えは「約100年前」。1913年に精工舎(現セイコーウオッチ)が初の国産腕時計「LAUREL」を発売してから、2013年でちょうど100周年を迎えた。

 このように日本で長く愛されてきた腕時計だが、近年では携帯電話やスマートフォンの普及で、腕時計が持つ「道具」としてのアイデンティティは失われつつある。一方、ファストファッションと呼ばれる安価なファッションスタイルが流行する中、若者たちの中では高価な腕時計を敬遠する「腕時計離れ」が進んでいるとも言われている。

photo 「Knot」のプロジェクトページ

 そんな中「腕時計を“リストファッション”として再定義し、若者たちにも親しまれるような新しいブランドを作る必要がある」と感じていたのが、15年にわたって海外ブランド腕時計の日本展開をプロデュースしてきた遠藤弘満さんだ。遠藤さんは2014年6月にクラウドファンディングサービス「Makuake」で、ファッション性の高い国産カスタム腕時計「Knot」の資金調達プロジェクトを開始。その後わずか6日で目標金額の100万円を突破し、最終的には目標の5倍となる502万円を調達したという。

 遠藤さんがクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げた背景とは。また、プロジェクト成立後にどのような展開を行い、今後どのようなストーリーを描いているのか――取り組みの裏側と狙いについて聞いてみた。

photo Knotのカスタマイズ例

1万円台で手に入る「Made in Japan」 カスタム腕時計「Knot」ができるまで

photo 遠藤さん

 遠藤さんは過去15年にわたって「LUMINOX」「SKAGEN」「BERING」といった海外ブランド時計の日本向け総合代理店を運営し、数々のブランドの日本展開を支援してきたウォッチプロデューサーだ。

 そんな遠藤さんは2012年5月、デンマークのSKAGEN本社が米国の総合ライフスタイルブランドFOSSILに買収されたことをきっかけに、輸入代理店ではなく自らブランドメーカーになろうと決意。「株式会社Knot」を起業し、社長に就任した。

 「腕時計が“時間を確認する手段”としての役割を失いつつある中、僕は腕時計をリストファッションとして再定義したいと考えた。例えば、眼鏡もコンタクトレンズの登場でその役割を失ったかもしれないが、伊達眼鏡やPC利用者向け眼鏡などの登場で、眼鏡をファッションアイテムとして使う人も増えている。腕時計にも同じような革命を起こしたい」(遠藤さん)

 そんな思いから開発したのが、時計本体とベルト部分を着せ替えでき、誰でも簡単に数百通りの組み合わせを楽しめるカスタム腕時計「Knot」だ。設計や流通の仕組みを工夫することで、メイドインジャパンながら1万円台の低価格を実現。若者や海外ユーザーにも日本製時計のエントリーモデルとして使ってもらえる商品を目指した。

photo

 「安かろう悪かろう」ではなく品質にもこだわった。ネットでのカスタム注文をメインとするKnotは、通常なら外部業者に委託する「製品設計・デザイン」や中間流通を省き、大幅にコストを削減。こうして、高級時計で使われているサファイアガラスなどの高価な素材も使って1万円台前半から提供できるようにしたという。

photo 外装部分は全モデルで「ステンレススチールSUS316L」を採用。耐食性に優れた抗アレルギー素材として知られ、メスなどの医療用器具にも多く採用されているという
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