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「次がラストチャンス」 金星探査機「あかつき」軌道投入に再挑戦 「必ず成功できる」(1/2 ページ)

» 2015年02月06日 18時30分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 中村プロジェクトマネージャとあかつきの模型

 「次がラストチャンス」――金星探査機「あかつき」(PLANET-C)が今年12月7日、金星周回軌道への投入に再挑戦する。2010年に行った最初の挑戦はエンジン故障で失敗。あかつきが再び金星に接近するタイミングで、再投入を試みる。「本来は5年前に成功していて当然のミッション。粛々と責任を果たしていきたい」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中村正人プロジェクトマネージャは話す。

 あかつきは、金星の大気の運動や雲の形成過程を観測を目的とした惑星気象衛星。地球とほぼ同じ大きさで、太陽からの熱入力も大差ない金星の気候を調べることで、地球への理解を深め、地球を含む惑星気象学の礎を築く狙いだ。

姿勢制御エンジンで再挑戦

 打ち上げられたのは2010年5月。同年12月7日、金星の近くで軌道制御エンジン(主エンジン)を噴かせてブレーキをかけ、金星周回軌道に乗せる予定だったが、エンジンが故障して投入に失敗。現在は太陽周回軌道を回っているが、金星に再び近づくタイミングで、軌道投入に再挑戦する。再挑戦は奇しくも、前回の挑戦からぴったり5年後の12月7日だ。


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 今回は軌道制御エンジンの使用をあきらめ、姿勢制御エンジンで軌道投入を目指す。姿勢制御エンジンの出力は軌道制御エンジンの20%程度で、当初200キロ弱積んでいた燃料は60キロまで減っている。わずかな出力と燃料で軌道投入するため、当初予定していた金星の周りを30時間で回る軌道に乗せることは断念し、金星のまわりを約8.7日間かけて回る新たな軌道に乗せる計画だ。

 新たな軌道は周期が長くなるため長時間の日陰が発生しやすいが、投入後の軌道周期と軌道傾斜角を調整することで長時間の日陰を回避し、バッテリーを維持するという。


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軌道投入は「ラストチャンス」

画像 石井信明プロジェクトエンジニア

 「軌道投入は必ず成功できる」――JAXAの石井信明プロジェクトエンジニアは自信を見せるが、乗り越えなくてはならない課題は少なくない。

 あかつきは現在、金星より太陽に近い軌道を回っているため、想定よりも高温の太陽熱にさらされている。近日点(太陽に一番近い点)を通過する際、エンジンやアンテナなど一部機器は設計時の想定を超える熱入力を受けるなど「厳しい熱環境」(中村プロジェクトマネージャ)で、予断を許さない状況だ。

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