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「音楽室の肖像画が笑った!」的な新技術、NTTが開発 光投影で「絵画や写真が揺れたりしゃべったり」

» 2015年02月17日 19時37分 公開
[ITmedia]
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 「止まっていると思っていた絵画や写真が、突然ゆれたりしゃべったり」――NTT(持ち株会社)は2月17日、印刷物など静止画に光のパターンを投影することで、まるで動いているかのような印象を与えられる技術「変幻灯」を開発したと発表した。人間の錯覚を利用した技術で、広告やインテリア、エンターテインメントなど幅広い分野での応用できるとしている。

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 静止画が動く映像をコンピュータで生成し、そこからモノクロの動き情報を取り出したものを、静止画に重ねて投影。静止画に含まれている色や形はそのまま見え、モノクロの動き情報が重なっている状態で、実際には動画にはなっていないが、人間の脳はこれらの情報を統合し、まるで動画であるように知覚する。

 炎の写真に変幻灯を投影して揺らめいているように見せたり、肖像画に変幻灯を投影して肖像がしゃべっているように見せたり、ポートレート写真に変幻灯を投影して被写体が動いたりまばたきしているように見せる――といったことが可能だ。

 立体を“揺らす”ことも可能。透過型ディスプレイにモノクロの動きパターンを表示し、その向こうに対象の立体を設置。立体とディスプレイを正面から重ねて見ると、立体が揺れているように見える。


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 「壁に掛かった風景画が風にそよぎ、肖像画がしゃべり出す。そんなはずは……」――同社の研究者は、こんな非現実的な状況を作り出せないか考えてきたという。NTTコミュニケーション科学基礎研究所で長年取り組んできた人間の感覚情報処理の研究に基づき、人間が自然な動きを知覚する際に働く視覚メカニズムの科学的知見を応用して開発した。

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 身近な物に映像を投影して新たな印象を与える手法としては、プロジェクションマッピングがあるが、対象面に新たな映像を映し出たすため、対象面の模様は見えなくなるケースが多い。変幻灯は対象の模様を活かし、その模様を動かす工夫をしている。

 プロジェクションマッピングは暗い場所で行うことが多いが、変幻灯は明るい場所で、投影対象が自然に見える状況で使うことを想定。簡単な画像処理で投影映像を製作することができ、CGを駆使して入念に映像製作する必要がない。

 紙媒体の広告に動きの印象を加えるなど広告分野での活用、床や壁に投影して液体が流れているように見せるなどインテリアへの応用、キャラクターイラストに投影して動きを与えたり、従来のプロジェクションマッピングと組み合わせるなどエンターテインメント分野での活用――などの用途を想定している。

 同技術は、2月19〜20日にNTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)で開催する「NTT R&Dフォーラム2015」で公開する。

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