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» 2015年04月30日 13時38分 UPDATE

動画マンは年収110万円 「とにかく低収入で長時間労働」――アニメ制作現場の実態公表

「とにかく収入が低く労働時間が長い」――NHKの報道で話題になったアニメ制作現場の実態調査の結果が公表された。労働時間が長く低収入である実態などが浮き彫りになっている。

[ITmedia]

 「とにかく収入が低く労働時間が長い」――日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は4月29日、「アニメ−ション制作者実態調査報告書2015」を発表した。アニメ制作者は作業時間が一般労働者の1.5倍超という長時間労働が慢性化している上、動画担当の平均年収は111.3万円と低い水準にとどまっているなど、厳しい実態が浮き彫りになっている。それでも続けているのは「楽しいから」という答えが最も多かった。

 文化庁の支援を受け、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)と協力して実施。昨年8月1日〜9月20日にかけて調査票を郵送・手渡しで配布し、返信用封筒で759部回収した(回収率28.6%)。

配偶者なし7割、子どもなし8割


画像 性別×年齢データ(JAniCAの資料より)
画像 学歴×最終学歴データ

 回答者の男女比は6:4。年齢は平均34.27歳で、多い順に「25〜29歳以下」(24.5%)、「30〜34歳以下」(19.9%)、「35〜39歳以下」(15.2%)だった。最終学歴は「専門学校卒業」が最も多く(43.7%)、次いで「大学卒業」(34.8%)となっている。

 婚姻・子どもの状況をみると、「配偶者なし(未婚)」が71.5%、「既婚」が25.3%、「配偶者なし(離婚・死別)」が2.5%、「子どもなし」が84.6%、「子どもあり」が13.6%(残りは無回答)。2013年の平均年収は「既婚」が484万円、「未婚」が274万円、「子どもあり」が494万円、「子どもなし」が307万円だった。


画像 婚姻状況
画像 子どもの有無

画像 就業形態

 就業形態は「フリーランス」が最多の37.7%。次いで「契約社員」(23.1%)、「正社員」(15.5)%、「自営業」(14.9%)となっている。主な就業場所は90.6%が「製作会社」。次いで「自宅」(7.1%)だった。

1日平均11時間作業 月間休日は4日

 2013年に携わった職種(複数回答)は「原画」が最も多く40.8%、次いで「LOラフ原」(32.4%)、「第二原画」(31.2%)、「制作進行」(24.4%)、「作画監督」(20.9%)、「動画」(20.6%)の順。13年に携わった仕事を媒体別(複数回答)で見ると、「テレビシリーズ」(83.4%)が最も多く、「劇場用映画」(42.2%)、「ゲーム」(41.6%)が続いた。


画像 2013年に携わった職種
画像 13年に携わった仕事

 1日当たりの平均作業時間は平均11時間。最多は「8時間超10時間以下」(31.3%)で、「10時間超12時間以下」(31.2%)、「8時間以下」(16.2%)、「12時間超14時間以下」(11.0%)、「14時間超16時間以下」(11.0%)、「14時間超16時間以下」(6.3%)、「16時間超」(2.6%)と続いた。

 1カ月当たりの作業時間は平均262.7時間。厚生労働省が全産業を対象に調査している月間総労働時間数(13年度、事業所規模30人以上、一般労働者)を94.2時間上回っている。1カ月当たりの平均休日は4.63日。「4日」と答えた人が最も多く29.9%、次いで「3日以下」が25.0%と、過半数が4日以下だった。


画像 1カ月当たりの平均作業時間
画像 1カ月当たりの平均休日

平均年収333万円 「動画」「第二原画」は110万円台


画像 2013年の年間収入

 2013年の年間収入(税込)は平均332.8万円。全産業を対象にした民間事業所の給与所得者1人当たりの平均給与(国税庁「平成25年分民間休養実態統計調査」)より約81万円低い。

 最も多かった年収レンジは「150万円超200万円以下」と「250万円超300万円以下」でそれぞれ12.4%。次いで「350万円超400万円以下」(10.7%)、「200万円超250万円以下」(10.2%)、「100万円以下」(8.2%)と続いた。

画像 職種別の作業時間・平均休日・最長無業期間・平均年間収入。動画・第二原画の年収は100万円台前半にとどまっている(図はJAnicaの資料を編集部で見やすく編集)

 職種別で見ると、「動画」が111.3万円、「第二原画」が112.7万円と極端に低く、「仕上げ」も194.9万円と3職種が100万円台にとどまった。年収が高いのは監督(648.6万円)、総作画監督(563.8万円)、プロデューサー(542.0万円)といった職種だ。

続ける理由は「仕事が楽しいから」

 現在の仕事を続けている理由(複数回答)は、「この仕事が楽しいから」が65.1%と最多。次いで「お金を得るため」(60.9%)、「作品を通じて人に感動を与えることができるから」(38.1%)、「自分の才能や能力を発揮するため」(30.2%)と続いた。」

 仕事をする上でどのような点に問題があるか感じているか(複数回答)は、「仕事のスケジュール調整が難しい」(69.3%)、「時間的な余裕のない中で仕事を強いられる」(58.9%)、「仕事上で要求されることが多岐にわたり対応に苦労する」(30.8%)、「報酬その他についての交渉力が弱い」(26.4%)といった回答が多く、労働時間や報酬の問題が目立った。


画像 現在の仕事継続理由
画像 仕事上の問題

画像 安心して仕事に取り組むために必要なこと

 安心して仕事に取り組むために必要なこと(3つまで回答)のトップは「報酬が増える」(57.7%)。次いで「より質の高い仕事をするために適切な納期やスケジュール管理」(47.2%)、「仕事を安定的に得られる」(27.0%)、「より質の高い生活を送るために適切な労働時間」(22.7%)、「老後の生活のために年金制度等が充実」(16.5%)といった回答が上位で、賃金や労働時間、雇用の安定性について改善を求めていることがうかがえた。

画像 自由記述の頻出単語

 自由記述では、賃金や労働環境への不満、アニメ産業への構造的な問題に関する記載が目立った。「とにかく収入が低く労働時間が長い」「消耗しきっている現場が多い」「人並みの生活ができるようになってほしい」「アニメ業界は『やりがい』のみで保っている」「将来や老後が不安」「お金の流れが不明瞭」「中抜きのやりすぎは業界全体の衰退につながっている」――などの意見があがっている。

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