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2016年02月25日 11時00分 UPDATE

あなたの知らないプリンタの世界:痛車はこうしてできている――最新デジタル印刷と職人技のスーパーコラボ (2/2)

[霄洋明(日本HP),ITmedia]
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ラッピングカーができるまで その特殊な制作工程

 車全体を画面としてデザインするわけですが、車両は直方体ではなく、美しい曲面で構成されています。車両の寸法図を取り寄せても、その立体曲面の展開図は手に入れることはできません。

 ではどうするのか。まずはメジャースケールの当て方を工夫して型紙のようなものを作ったり、変形させて実寸の形、取っ手やウインカーなどのパーツ位置を割り出したり、超アナログな作業からスタートです。

 完成した姿をイメージして、グラフィックデザインを検討します。ステッカー貼り付け施工を想定し、前後左右、そして上部(屋根)に展開。多くのカーラッピング用のステッカー素材は1.3メートルほどの幅でできたロール状のものです。1.3メートルよりも大きい盤面は、ステッカーを貼りあわせていきますので、なるべくステッカーのつなぎ目ができないようにパーツ取り(分割)をしてステッカーに印刷します。この時の印刷はインクジェットが一般的です。

 最も大事な工程、貼り付けで生きるのが熟年の職人技。曲面で構成された車体に隙間なく絵柄もつながるように貼り付けるのはとても難しいことです。のびる湿布薬をかかとからつま先までぴっちりと足全体を覆うように貼るようなイメージでしょうか。デザインは車体に合わせて事前に印刷されており、ずれは許されません。

photo ミラー部分にもぐるりと貼り付け
photo ドライヤーで温めるとかなり伸びる

 カーラッピングに使われるステッカー素材の多くは塩化ビニールです。熱によってやわらかくするために、貼り付ける時にはヒートガンという業務用ドライヤーや、携帯用ガスバーナーなどの道具が使われます。プロフェッショナルによる片手に武器を携えたような華麗な手さばきは、まるでエンターテインメント。展示会などで行われる施工実演はいつも黒山の人だかりです。

 車体全体を立体キャンバスと見立てて、さらに複数のパーツを貼り合わせる難易度Aクラスのパズルともいえる痛車ラッピング。デザインと印刷、そして施工のチームワークとプロの技が必要なのです。

 フィルムの色分けや貼り付けにはカッターを使います。しかし車体に傷を付けるわけにはいきません。熟練の職人さんは貼り付けたフィルムにカッターを当て、車体を傷つけることなくカットすることもできます。0コンマ何ミリを切り込む神技です。最近では、とても細い金属の糸をあらかじめカットラインに貼りこみ、カッターを使わずにステッカー素材を切り出す不思議なアイテムも登場しています。

子どもから大人まで「ラッピング体験コーナー」

 2015年11月に開催された「第19回名古屋モーターショー」でもラッピングカーは注目を集めていました。冒頭にご紹介した痛車コーナー「萌え〜ターショー」と並び、人気を集めていたのが「ラッピング体験コーナー」です。

photo 白い車にぺたぺたラッピング
photo バイクやスクーターも華やかに(協力:株式会社デザインラボ)

 プロフェッショナルな技をもっと一般の方に知ってもらおうと、カーラッピングの専門業者によって企画されたこのコーナー。子どもから大人まで、色とりどりのステッカー素材を自由にペタペタと貼り付けていきます。真っ白の車が、たった半日でカラフルなラッピングカーに変身していました。毎日真っ白に戻す作業は大変だったかもしれません。

 痛車で再注目されたカーラッピング、営業車への活用はもちろんですが、小回りの効くバイクも小さい面積ながら注目度は抜群。出前バイクをカラフルに彩るなど、活躍の幅は広そうです。

 通常イメージする「プリンタ」とは少し違いますが、個人の趣味からビジネス活用まで、案外身近なところで最新デジタル印刷と職人技のコラボレーションを支えているのが、大型プリンタなのです。

著者:霄洋明(おおぞら・ひろあき)

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 日本HP大型プリンターエバンジェリスト。ワイドフォーマット事業本部に所属し、大型のインクジェットプリンタのソリューションアーキテクトを担当。

 東京都中野区出身。学生時代は総合格闘技と彫刻(木彫・塑造)に熱中。大型インクジェットプリンタ黎明期ともいえる1996年頃にアルバイト入社した画材店で大型プリンタと出会う。

 その後、広告代理店で、屋外/交通広告・商業施設装飾・サイン計画などに関わり、企画ディレクション・制作施工管理を経験。2010年より 日本HPに入社。デジタル印刷を活用したサイン・ディスプレイとインテリアデコレーションの企画・制作・施工の知見を生かし、HP Latex・UVプリンタ(業務用大型プリンタ)の市場・用途開発を担当。現在は、デジタル印刷技術によってサイン・ディスプレイ業界、インテリア業界、印刷業界をつなげるハブとなってお客様の事業領域拡大を支援することがテーマ。


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