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JAXA、X線天文衛星「ひとみ」運用断念 太陽電池パドルが分離か 「原因究明が我々の責務」

» 2016年04月28日 16時17分 公開
[ITmedia]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月28日、異常が発生していたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の運用を断念すると発表した。両翼の太陽電池パドルが根本から分離した可能性が高いという。復旧作業を取りやめ、原因究明に専念する。

photo 両翼の太陽電池パドルが根本から分離した可能性が高いという(JAXAの会見より)

 観測にあたって姿勢変更する際に、制御系に不具合が生じ、衛星が異常に回転したと推定している。回転が加速し、機体に負荷が加わった結果、構造的に弱い部位である太陽電池パドルが、両翼とも根元から分離した可能性が高いと判断した。衛星本体にバッテリーを搭載しているものの、残量が少なく、電源の確保が難しいという。

 異常発生後も「ひとみ」のものと思われる電波を3回受信し、通信復旧の可能性があるとしてきた。だが、検証の結果、本来の周波数と比べて200kHzの差異があり、別の衛星が発した電波と判断した。JAXAの常田佐久理事は「通信機器が“生きている”かどうかは断定できないが、復旧が見込めない」としている。

 常田理事は「技術的原因を早急に究明することが、われわれの責務」とコメント。設計から製造、検証、運用の各段階で、トラブルに至った原因を調査する方針だ。「現時点で『ひとみ2』など、原因究明より先のことを言う状況にはない」(常田理事)。

photo JAXAの常田佐久理事

 同衛星はX線を専門に観測する衛星として、JAXAが2月に打ち上げた。巨大ブラックホールや銀河団の成り立ちの解明に貢献すると期待されたが、3月26日の運用開始時から電波を正常に受信できない状態が続いていた。

photo X線天文衛星「ひとみ」

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