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ノートPCにタッチパネルはいらない!? 壮大なテーマに開発者の視点から迫る“中の人”が明かすパソコン裏話(1/2 ページ)

» 2016年11月25日 11時00分 公開

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、ACアダプターやCPUファンなど、普段は脇役ともいえる周辺機器やPCパーツに光を当て、それらの素晴らしさや選ぶときに気を付けたいポイントを紹介してきました。

 今回は、スマホやタブレットでおなじみの「タッチパネル」が果たしてノートPCにおいては役立つのか、本当に必要なのかという「誰もが気になっているが、明確な答えのない壮大なテーマ」に挑戦したいと思います。

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 これまで、ノートPCにはポインティングデバイスとして「タッチパッド」や「ポインティングスティック」が搭載されてきました。周辺機器として「マウス」もおなじみですね。従ってタッチパネルは必須ではありません。しかし、タッチで操作できるスマホやタブレットが広く普及した中で、ユーザーがタッチ操作に慣れ親しんでいることを考えると、メーカーとしては「タッチ操作もノートPCに取り入れたらいいんじゃないか?」という考えが自然と出てくるわけです。

 しかし、物事には「万能」というものはありません。前回の連載でも触れたように、何かを得れば、何かを失います。想像にたやすいところでは、タッチパネル機構に必要なタッチセンサーとガラスを採用することで、部品点数が増えて製品が重たくなってしまいます。

 故スティーブ・ジョブズ氏も、この件について「垂直に近い画面をタッチして長時間操作すると腕がつかれてしまうので、人間工学という観点でノートPCにタッチは適していない」という見解を表明していました。

 私見ですが、これらはいずれも正しいと考えています。しかし、ノートPCにタッチパネルが全くダメなのかというと、ここに面白い視点があると考えています。その糸口は「ペン」と「スタンド」です。

2in1の登場

 ここ数年は、技術の進歩によってノートPCにもタブレットにもなる「2in1」というカテゴリーの製品が登場しました。普段はノートPCのように使え、キーボードを取り外せばタブレットとしても利用でき、タブレットの背面にスタンド機構が付いた製品も登場しました。スタンドを倒してタブレットを寝かせれば、ペン入力にも便利です。

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 2in1の設計という観点では、ディスプレイ側にスタンドを持たせる構造にするか、それともキーボード側でディスプレイを支えるのかで大きく設計が変わります。

 また、ディスプレイが360度回転するタイプも省スペース性、クラムシェルとして利便性の高さでは有利ですが、ディスプレイ単体では自立しない、キーボード部に支持する重量が必要など、一長一短があります。

 いずれの場合も、快適なキーストロークやインタフェース、駆動時間を維持しながら薄型・軽量化と耐久性・堅牢さのバランスをいかに取れるかが難しいところであり、設計のやりがいがある部分です。

 製品というものは「良い」と思われるものを全て取り入れればよいというものではありません。目的の明確化と絞り込みが重要です。

組み合わせが変われば世界も変わる

 かの有名なお話ですが、ジョブズ氏がiPhoneの発表会で「スマートフォンにスタイラス(ペン)は不要」と断じました。これは多くの人々の脳裏に強く印象付けられ、私もその時は「ペンの時代は終わった」と感じました。

 しかし、よくひもといて考えてみれば、これは片手操作が日常の携帯電話にペンはナンセンスという話であり、PCでの利用を否定するものではなかったのではと、今では考えています。実際にプロのアニメーションや、イラスト、マンガ、フォトレタッチの分野では、ペンタブレットという商品が随分前から存在し、現在も制作現場で活躍しています。

photo ペンタブレット(写真・ワコム提供)

 ペンタブレットを使うことで、マウスやタッチパッドでは表現することのできない繊細な線を表現することができます。ペンには筆圧を感知する機能が付いたものもあり、まさに鉛筆でスケッチブックにデッサンするように、強弱を加えながら、濃淡だけで陰影を落とすこともできます。

 ディスプレイにペンでそのまま書き込むことができる「液晶タブレット」も以前から登場しており、プロの制作現場で活躍中です。液晶タブレットであれば、まさに紙に書くようにデッサンすることが可能になります。

photo 液晶ペンタブレット(写真・ワコム提供)

高性能なペンが、ついにPCと融合

 2in1のペン対応モデルにおける強みが「手書き」という武器です。例えばPowerPointには、プレゼンテーション中に手書きでスライドに注釈を入れられる機能が搭載されています。レーザーポインターなどで指し示すよりも、より分かりやすく聴衆の視点を誘導できるのです。

 人間も動物なのでレーザーポインターの動きをつい追いかけてしまいます。特にレーザーが一般的な赤色ではなく緑色だったりすると、物珍しさからレーザーポインターを視線で追いかけてしまい内容が全然入ってこないなんてことも……。

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