がんのもとになる細胞を周囲の正常細胞が組織から排除する――そんな現象のメカニズムを解明し、細胞の排除を促すたんぱく質を発見したと、京都大学の研究グループがこのほど発表した。新たな治療法につながる可能性があるという。
がんの初期段階では、正常細胞から変異しがん化していく細胞を、周囲の正常細胞が組織から排除し、症状の悪化を防ぐという仕組みがある。だが、その際に働く遺伝子が不明で、詳しいメカニズムは分かっていなかった。
研究グループは、ショウジョウバエの眼の上皮細胞を使い、がん化する細胞の排除に必要な遺伝子を探した。すると「Slit」「Robo」というタンパク質を作る遺伝子が壊れると、排除できなくなることを発見。これらのタンパク質が、がんのもとになる細胞と周囲の正常細胞を互いに反発させ、排除している可能性があると分かったという。
SlitとRoboは、細胞同士を接着させるタンパク質「E-カドヘリン」の働きを抑制し、がんのもとになる細胞と正常細胞の結び付きを弱め、がん化する細胞を正常細胞から“すり抜く”ように排除していることも分かった。
研究グループによれば、人間のさまざまながんで、SlitやRoboを作り出す遺伝子に異常が見つかっているという。今後はほ乳類の細胞を使い、ショウジョウバエに限らない現象かどうか検証する予定。
研究成果は米科学誌「Developmental Cell」に12月20日付で掲載された。
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