ビットコインへの投機資金流入は今に始まったことではない。いまからさかのぼること4年前の2013年11月末、ビットコインは約200ドルから1カ月で1000ドルと5倍に急騰した。このときに指摘されたのが投機資金の流入だった。
案の定、同年12月初めにビットコインは直近高値の1140ドル付近から40%近くも急落した。そのきっかけとなったのが、上海のビットコイン取引所、BTCC(比特幣中国)による人民元預け入れ停止措置だった。当時すでに世界最大級となっていたBTCCに流れ込んだ人民元が、急騰の要因になったと考えられたために実施された。その後2014年1月30日に人民元の預け入れを再開している。
2017年5月時点の取引量ベースの国別市場規模は、米国、日本が最大で、次いで中国と言われている。中国の取引量シェアは世界全体の80%とも90%と言われていた時期もあるが、2017年初めに国内で実施された規制措置で取引量は激減。しかし、依然として世界3位の規模を誇っており無視できない存在だ。さらに、今後の展開次第では中国の取引量が戻ってくる可能性も指摘されている。
中国でのビットコイン需要はなぜこれほど高いのか。1つは投機目的だが、この他人民元安に対応するためのヘッジ手段として多用されているからとも考えられる。
2016年10月12日、ビットコイン価格は10週間ぶりの高値をつけた。これは、中国人民銀行が元安を容認するとの観測が広がり、中国のビットコイン需要が高まったからと見られている。この日を境に同年末までの2カ月間で、人民元は6.72元から6.98元へと下落を続けた。同時期のビットコインの値動きを観察すると、630ドル付近から一気に1000ドル付近まで上昇している。元安のヘッジとして、ビットコインに資金が流れ込んだ格好だ。
投資資金や投機資金の他に注目すべきは、中国当局の動きだろう。中国国内の取引所を取り締まる当局の動きが、市場に大きなインパクトを与えているからだ。
2017年初め、中国金融規制当局は国内主要取引所を立ち入り検査したと発表。これに伴いビットコイン価格も急落した。立ち入り検査の目的は、取引業者が法令順守しているか確認するもの。取引所側は、信用停止措置などで当局への協力姿勢を示したとされる。この他、マネーロンダリング対策を強化させるなど、市場安定化に向けてさまざまな措置がなされた。
また6月には中国人民銀行がビットコインに関する管理規則を発表する予定で、新規則の内容次第では相場が影響を受けるとも考えられている。
このように、投機資金や中国の動向がビットコイン価格に影響を及ぼしてきた。これらが今後のビットコイン動向を見る上で助けとなるはずだが、まだ発展途上であるビットコイン市場はこの他にもさまざまな要因に影響を受けると考えられる。世界情勢、国別の規制、為替など多角的な視野で考えることが重要だ。
時事通信社シンガポール支局に所属し、IT・金融・経済・ビジネス・スタートアップ・脳科学など先端学問を含む領域において、取材・翻訳記事の執筆に携わる。2014年に Livit に参画。シンガポールの政府機関や日系・ローカルの大手企業、スタートアップ企業とのネットワークも豊富。
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