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2017年06月22日 08時00分 UPDATE

我々はファクトチェック団体にはならない:これ以上、“偽ニュース”を野放しにするわけにはいかない――メディアの信頼性向上を目指し任意団体が発足

国内で、ファクトチェック(事実確認)の推進・普及に向けた任意団体が発足した。

[田中宏昌,ITmedia]

人々が正確に判断できるような材料を提供するのが目的

 真偽不明の偽ニュース(フェイク・ニュース)が何かと話題を集めている。日本でも、DeNA(ディー・エヌ・エー)が運営していた医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の問題を皮切りとして、さまざまなメディアでいまだにくすぶり続けている課題でもある。

 2017年6月21日、東京都内で1つの団体が発足した。

photo ファクトチェック・イニシアチブ・ジャパンの発起人。発足会には10人中7人が参加した

 「ファクトチェック・イニシアチブ・ジャパン」(FactCheck Initiative Japan、以下FIJ)は、メディアやジャーナリズムに関わる人々が業界の垣根を越えて集まった任意団体だ。

 FIJの活動方針は、下記の3つ(FIJの配布資料から抜粋)。

  • FIJは日本国内のファクトチェック(事実に関する言明の真偽・正確性を検証する活動)の推進と普及を目的とした協議体(任意団体)です
  • FIJは、国内のファクトチェックの事例を集積し、ファクトチェックのガイドラインおよびその評価方法、効果的な情報提供の方策について検討します
  • FIJは、国内外のメディア、教育/研究機関、関連団体とも連携を図りつつ、ファクトチェックの量的/質的向上の施策や、ファクトチェックに貢献する団体・個人を支援する仕組みを検討し、近い将来の法人化を目指します

 海外では、GoogleがGoogle検索の結果およびGoogleニュースでファクトチェックのラベル表示を開始したり、Facebookがファクトチェッカーの警告表示を始めたり、既存メディアが協力して偽ニュース対策(CrossCheck)を行ったりと、メディアやプラットフォーマーなどがさまざまな活動を行っている。

photo 海外では、欧米を中心にファクトチェックを行うWebサイトが116あるという
photo 一般社団法人日本報道検証機構代表の楊井人文氏

 FIJの発起人で事務局を運営する楊井人文(やないひとふみ)氏は、自身が立ち上げたマスコミ誤報検証・報道被害救済サイト「GoHoo」を引き合いに出し、「世界ではすでに116のファクトチェックWebサイトが稼働しているが、日本ではまだごく少数だ。国内でも、業界の垣根を越えて情報の真偽・検証に真剣に取り組む時期にきているのではないか」と、FIJの設立趣旨を説明した。

 FIJが掲げるファクトチェックとは、

  1. 事実に関する言明の
  2. 真偽・正確性を調査・検証し
  3. 証拠などの判断材料を提供する

とし、ファクトチェックの目的を

  1. 誤報・虚報の拡散防止
  2. ジャーナリズムの信頼性向上
  3. 言論の自由の基盤強化

とする。「私たちが志向するのは、人々が正確に判断できるような材料を提供することだ」(楊井氏)

 FIJが目指すファクトチェックの対象は、実に広範囲だ。

photo FIJが定めるファクトチェックの対象

ファクトチェックを支援する体制を実証実験

photo スマートニュース 執行役員 メディア事業開発担当 藤村厚夫氏

 膨大なファクトチェック対象に対して、どのように立ち向かっていくのか。

 発起人の1人であるスマートニュース 執行役員 メディア事業開発担当の藤村厚夫氏が、FIJでのファクトチェック支援システムについて概要を語った。

 「インターネット上の爆発的な情報量に対して、人力によるファクトチェックには量的限界という課題がある。そこで、機械学習や自然言語処理技術を活用したファクトチェック支援システムを整備したり、ファクトチェック情報が埋もれてしまわないよう、オープンに活用可能なシステム向けデータベース(API)を整備したり、各社独自のファクトチェック対策が乱立している現状を打開すべく、標準的なフォーマットにそろえていく必要がある」(藤村氏)

 具体的な役割分担として、スマートニュースがファクトチェック情報のオープンデータ化とシステム間連携を提供し、東北大学の乾・岡崎研究室がファクトチェックすべき情報の解析と絞り込みを行い、FIJが日本のファクトチェック団体に情報提供するなどネットワーク化を手がけるのが当初の構想だ。

photo ファクトチェックを支援する(当初の)体制案

 藤村氏は「スマートニュースで日々クロールしているソーシャルメディアなどの情報を、東北大学の乾・岡崎研究室の情報を組み合わせるイメージだ。ソーシャル上の情報の端緒を機械が選び、人間がファクトを判断する。最初に教師データありきではやっていかない。メディアに限らず、政治家やネットの情報が対象となり得るが、現状はソーシャル上の情報を集める。実証実験はここ1カ月以内に始めたいと考えているが、専門家が十分に検証した上で結果を公開していきたい」とし、「ゴールはオープンなスキーム作りだ。Googleなど、さまざまなところで情報提供に携わる企業の参加を求めていきたい」と抱負を述べた。

photo ゴールはオープンなスキーム作りだ

FIJはファクトチェッカーにならない

 FIJでは今後の施策として、上記のガイドライン作成や支援システムの実証実験に加え、7月5日からスペインのマドリードでInternational Factchecking Networkが開く「Global Fact 4」への参加と報告会の開催、ファクトチェック事例やガイドラインのセミナー開催、FIJ法人化に向けたシンポジウムの開催、そして活動資金の募集を挙げた。

 事務局の楊井氏は「FIJはファクトチェックの推進と普及も目指した協議体というあいまいなもので、自身がファクトチェッカーにはならない。ファクトチェックを支援する仕組みと、プラットフォームを提供していく」と語った。

ファクトチェック・イニシアティブ・ジャパンの発起人(五十音順、敬称略)

  • 乾健太郎(東北大学大学院情報科学研究科教授)
  • 小川和久(静岡県立大学特任教授、NPO法人国際変動研究所理事長)
  • 奥村信幸(武蔵大学社会学部教授)
  • ジョン・ミドルトン(一橋大学大学院法学研究科教授)
  • 瀬川至朗(早稲田大学政治経済学術院教授)
  • 立岩陽一郎(NPO法人アイ・アジア代表)
  • 藤村厚夫(スマートニュース株式会社執行役員 メディア事業開発担当)
  • 牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)
  • 楊井人文(一般社団法人日本報道検証機構代表、弁護士)
  • 山崎毅(NPO法人食の安全と安心を科学する会理事長)

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