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» 2017年11月21日 08時00分 公開

太田智美がなんかやる:3カ月待ち“未来の靴屋” 3D計測で自分だけのパンプス作成

伝統と新技術を掛け合わせた「未来の靴屋さん」に行ってきた。

[太田智美,ITmedia]

 “未来の靴屋さん”が、東京・新宿区にあるのをご存じだろうか。モノづくりを行うミリメーター社が運営するShoesCafeというお店だ。

 ShoesCafeは、自分の足の形と好みに合うオリジナルのパンプスを購入できる、フルオーダーメイドの靴屋さん。2017年1月にサービスを開始して以来、3カ月待ちの状態が続いているという。

 価格は6万円からと決して安くはない。それでも20〜90歳までの人が、連日店を訪れている。どんな靴屋さんなのか。


MILLIMETER (左から)津田真理子さん、酒井満夫さん、粕谷孝史さん

 扉を開けると、おしゃれな空間が。案内された椅子に座り、足のカウンセリングを受けながら、3D計測器を用いて計測が始まる。計測は完全予約制。

 透明のアクリル板に素足を載せると、青い光を放つ特殊な機械で、足をスキャンしていく。スキャンしたデータはリアルタイムにPCへ送信。足の甲からかかとの傾斜まで、スキャンできていないところはないかPC画面で入念にチェックする。


MILLIMETER 3D計測した足

 ミリメーター代表取締役の粕谷孝史さんは、もともとITコンサルタントだったという。その彼がなぜこのような靴屋を始めたのか。「自分の足に合う靴がないと悩む女性が世の中に多くいることを知りました。血が出たり、痛くて脱ぎ捨ててタクシーに乗ったり。そういう悩みをIT領域の1つとして解決できるのではないかと思いました」(粕谷さん)。

 足の計測が終わると、靴のデザイン選定へと移る。素材や色は常時100〜200ほどから選べるようになっており、カラーパターンを見ながら、デザインや素材・色を決めていく。このとき、足の柔らかさや形なども考慮してアドバイスをしてくれる。

 これが終わると、いよいよ靴の製作段階に入る。計測データを靴型(木型)に変形させ、そのデータを基に3Dプリンタで靴型を出力。このデータ作りが重要で、2人がかりで約2日かかるという。ちなみに、計測した足形から靴型に変形させるデジタル処理は社外秘。


MILLIMETER 足の3Dデータから靴型を作る

 面白いのは、3Dプリンタで出力する際、つま先とかかとを別々に印刷すること。というのも、パンプスは土踏まずやヒールの部分を作らなくてはならないため、靴の底から重ねて印刷することができないのだという。また、木型は皮を貼る際に強くたたくため、強度も必要。その対策として、印刷された木型の中は空洞ではなくハチの巣状になっている。


MILLIMETER つま先とかかとを別々に印刷する

MILLIMETER リピーターは約5割。そのため、このように靴型をつるして、再利用できるようにしているという

 この、つま先とかかと部分をくっつけると、やっと見慣れた靴の形になる。ここに、選んだ皮をあて、ペンで枠取りし、素材を切る。

 続いて行われるのが「つり込み」という作業。3Dプリンタで作った靴型に、先ほど切った素材を張り付ける。このとき、左右が1ミリずれただけで印象が大きく変わるため、対称に作らなくてはならない。


MILLIMETER 間違えないよう、靴型に名前が付けられている

 驚いたのは、3Dプリンタでできた靴型に、とてつもない力が加わっても壊れないということ。靴は、たたけばたたくほどぴったりしたいいものになるという。あとは「ワニ」という道具を使って、ひたすら「たたく」「引っ張る」「くぎを打つ」の繰り返し。くぎも3種類あり、素材が重なって厚い部分には長いくぎを、薄い部分には短いくぎを打つ。

 靴に使われているくぎは普段私たちが見るくぎとは少し違って、真っすぐになっていない。打ったときに、靴裏の鉄板から飛び出さないよう、曲がるようにできているのだ。ちなみに空港で靴を脱ぐように言われるのは、このときに打ったくぎが引っ掛かってしまうため。


MILLIMETER くぎ。筆者も1本靴にくぎを打たせてもらった

MILLIMETER もともとは、このように生地が分割されている

 こうして、注文から約3カ月で完成する。

 完成したパンプスに足を通して見ると、これまでに体験したことのないようなぴたっとした感覚がある。歩いてみても、少しの隙間もない。このぴたっとした感覚こそが、足を痛めない上で大事なのだという。


MILLIMETER 完成したパンプス

 ミリメーターは11月15日、20年を見据え開発された革新的で将来性のある製品・技術、サービスを表彰する「17年世界発信コンペティション」で「東京都革新的サービス優秀賞」に選ばれた。伝統とテクノロジーを融合した、まさに「未来の靴屋さん」なのである。

太田智美

筆者プロフィール

プロフール画像

 小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。

 大学院を修了後、2011年にアイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わり、2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属。プライベートでは2014年11月から、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボットパートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。

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