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» 2017年11月24日 09時00分 公開

ネットのダークマター:巨大ビジネス化する海賊版 悪質「リーチサイト」の台頭、止める策はあるか (2/3)

[福井健策,ITmedia]

 ところでサイバーロッカーの海賊版、無料でダウンロードしようとすると遅いし中断するしでまともに役に立たないことが多い。他方、月額1000円などの有料会員になると、実にサクサク読めるとされる。これがサイバーロッカーの収入源。かつて「メガアップロード」(MEGAUPLOAD)という、当時海賊版の巣窟といわれたストレージの関係者がFBIに国際逮捕された時など、押収されたサーバは1000台、現金預金類だけで実に50億円相当はあったという羽振りの良さである。

画像 今は亡き「メガアップロード」の報奨金のページ。ドル袋を持つ男と謎の美女がほほ笑む

 そしてサイバーロッカーは、たくさんダウンロードされるコンテンツをアップしたユーザーには何と報奨金を出す。大量ダウンロードされるコンテンツなんて大半は海賊版だろうが、そこは知らないで押し通すのだ。報奨金をもらうためには、アップローダーは自分がアップした海賊版にユーザーを誘導しないといけない。だからその時点では誰も知らない海賊版ファイルへのリンクを、リーチサイトに投稿する。という訳で、リンクの投稿者や時にはリーチサイトの関係者自身が海賊版を投稿している蓋然(がいぜん)性はかなり高いとされる。週プレの構造図など、既にこの「リーチサイト=海賊版投稿者」である例を説明する図になっている程だ。

画像 週プレNEWSの記事より

 だが建前ではサイバーロッカーは海賊版を知らないふりだし、アップロードした個人の情報も開示しない。リーチサイトはリンクしているだけ。見事だ。ずる賢さではもはや越後屋レベルをはるかに超え、阿片三角貿易の大英帝国並みではないか。

海賊版追及をはばむ3つの壁

 さて、「はるか」逮捕により今後海賊版の構造が明らかになり、関係者も明らかになることが期待されている。特に「はるか」はリンク合法を広言し、特定人気作品の海賊版リンクの投稿を呼びかけるなど、かなり確信犯的・主導的だった。こうなると現行法でも著作権侵害の「共犯」責任を追及される可能性は十分ある。とはいえ、海賊版全般の追及となると次の3つの「壁」があって、今後も容易ではないだろう。

(1)適法な(or追及の難しい)海外のホストサイトがある

(2)そこに身元を隠して海賊版をアップできる

(3)そこへのリンクは適法、という一般論

 無論、それでも対策はあるし今回の逮捕もその表れだが、よほどの人材とノウハウを注ぎ込まないと抑え込めない。各社対応などでは、とてもとてもだろう。

 その一方、「海賊版はどこまで有害なのか」という議論もある。宣伝・試し読み効果があるのでそう有害でもないのではないか、という説だ。最近では欧州委員会(EC)の委託調査報告書(PDF)にそういう結果が書いてあった、と報じられた。もっとも、実際に読んでみるとこの2014年の報告書のニュアンスは少し違う。むしろ、欧州各国での膨大な海賊版視聴はデータで裏付けられている。そして、最近の人気映画では海賊版が10本視聴されると、正規版の視聴が4本減ると明記があって、その意味では海賊版の悪影響を認めてもいる。ただ、他の分野では「海賊版視聴と正規版購入は住み分けている」可能性を払しょくできないということのようだ。

 もっとも、こうした調査は多くの場合、「現状の海賊版流通を前提にした推計」だ。現在、海賊版はほとんどの国で犯罪であり、その視聴は相応に不便でかなりの「後ろめたさ」がつきまとう。その状況での調査結果であって、例えば海賊版が公然と流通されて正規版と同じ高品質で誰でも無料視聴できるようになっても、正規版の売上が落ちないかといえば答えは明らかだろう。万一今のペースで海賊版が巨大化を続けた場合、それでも従来のコンテンツ産業が同じエコシステムを維持できるとは、筆者には想像しにくい。

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