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人の手をヒントにした新構造ロボットハンド、NEDOなどが3種を試作 紙でも作れる

» 2018年01月11日 20時06分 公開
[ITmedia]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、ダブル技研、都立産業技術高専は1月11日、人間の手や指を模倣したロボットハンド用の新構造を開発し、3種のロボットハンドを作ったと発表した。人間の手の構造や大きさをまねた「F-hand」、産業用のニーズが高い3本指の「New D-hand」、機械部品を使わず紙だけで構成した「オリガミハンド」の3つで、さまざまな分野への展開が期待できるという。

photo 「F-hand」
photo 「New D-hand」
photo 「オリガミハンド」

 これらのロボットハンドを実現した新構造は、人間の手や指の構造を工学的に模倣した「からくり」のようなもので、「協調リンク機構」と「指先なじみ機構」という2つの構造からなっている。

 協調リンク機構はロボットハンドの手の平と全ての指を連動させる構造。これにより自動的に力を均一に分散させることができ、センサーなどで制御しなくても、モーター制御1つでつかみたい物の形状に合わせて手を曲げることができるという。

photo 協調リンク機構

 一方指先なじみ機構は、ロボットハンドの指先をぴったりとつかむ物に接触させるための構造。人間の人差し指と中指が親指と一緒に物をつかむ時、微妙に回転して接触面を大きくするの動きをまねたという。2つの構造を組み合わせることで、指や関節の位置や動作を細かく制御しなくても、最小限の力で優しく物をつかめるようになった。

photo 指先なじみ構造

 新構造を使った3種のロボットハンドも開発。F-handは、人間の手をまねた5本指のロボットハンドで、大きさは大人の手と同じくらい。イチゴやモモなどの柔らかい果物を傷つけずにつかんだり、電動ドリルなどの工具をしっかりと握ったりすることができる他、人間用のゴム手袋や耐熱手袋を使うことができるため、ロボットハンドの部品や構成を変えることなく、さまざまな用途に対応できるという。

photo イチゴをつかむF-hand

 New D-handは産業用のニーズが高い3本指のロボットハンド。F-handが最大で1キログラム、9センチ程度のものまでしかつかむことができないのに対し、こちらは最大5キロ、直径8センチ程度のものをつかむことができる。従来の産業用ロボットが苦手だった洗剤の詰め替え用パックなども安定的に優しくつかむことが可能で、物流や製造業での搬送や組み立て、加工工程などへの活用を見込む。

 オリガミハンドは紙だけで構成したロボットハンドで、2指モデルと5指モデルがある。用紙に印刷して切り抜くだけで製作でき、コピーサイズを変更すればさまざまなサイズに対応可能。簡単に使い捨てることから医療や食品などの衛生分野への活用を見込む他、軽さや簡単な構造を生かして宇宙や深海などの極限環境への用途も期待できるという。

photo オリガミハンドの構造と実験の様子

 3種類のロボットハンドは、1月17日から19日まで開催される「第2回ロボデックス」(東京ビッグサイト)にダブル技研が出展する予定。

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