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» 2018年01月15日 09時00分 公開

新連載・あなたの知らない欧州スタートアップの世界:日本企業が米国より欧州スタートアップと相性のいい理由 (1/2)

日本企業は欧州のスタートアップと相性がいい? フランスで15年間ベンチャーキャピタリストとして活動するマーク氏がその理由を解説する。

[アドライト,ITmedia]

 Google、Apple、Facebook、NVIDIA、Airbnb、salesforce.comに共通するものは何か? 「米国のメガベンチャー」以外にもう1つ答えがある。それは、これら企業のAIやマシンラーニング関連部署、もしくはAIのイノベーションに投資しているトップがフランス人ということだ。

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 過去10年、欧州ではイノベーションにおいて大胆なトランスフォーメーションが起きている。Deep Tech企業が続々と輩出され、世界的にも投資対象的にも米国に勝るとも劣らない魅力的な場所に成長している。さらに、日本企業も米国より欧州との相性の方がいいという見方も浮上している。

 米国で3社起業後、フランスで15年間ベンチャーキャピタリストとして活動するTruffle Venture Capitalパートナー、マーク・ビヴェンズ氏に協力を仰ぎ、それら理由をみていきたい。

質の高いエンジニアとDeep Tech企業の台頭

 欧州では2013年以前、ベンチャー投資額が2億ドル程度だったが、17年に6.5億ドルまで上昇。Deep Techの走りであるFintechのブームと重なり、米国より早く波に乗ったことが功を奏したといわれる。P2Pレンディングプラットフォームや保険のネット商品、KYC(Know Your Customer)といったスタートアップが軒を連ねた。

 為替手数料ゼロでオンラインの海外送金を提供するTransferwise、WorldRemit(送金)、Klarna(オンライン決済サービス「Stripe」の欧州版)のように、欧州、米国とも10社近いFinTech関連のユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場ベンチャー)が出てきている。

 ユニークな技術を使うDeep Tech領域も、AIを使った製薬開発サービスを行うBenevolent AIといったベンチャーの台頭以外に、冒頭触れた主要人物がみなフランス人(Google ヨーロッパのマシンラーニングのリサーチトップ、AppleのDeep Learningのトップの1人、FacebookのAIリサーチトップ、NVIDIAのAIインフラトップ、AirbnbのAI Labトップ、SalesforceのAIプロダクトのトップ)なのは、質の高いエンジニアが育ちやすい環境が関係している。

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 西欧にはさまざまなDeep Techの履修過程を持つサイエンステクノロジーの大学が60校以上ある。彼らは卒業後、政府機関や大企業勤めが一般的だったが、この15年の間にベンチャーへのジョインや起業に傾倒するようになった。

 リーマンショック以降、欧州の失業率は多いときで20%以上にも上った。優秀な人材も放出されたことで必然的に起業が増え、彼らを雇用することで十数%には改善し、今後もその傾向は続く見通しだ。

 米国でコンピュータサイエンスやニューロサイエンスを勉強していた人たちがAIを話題にし始めた頃、欧州ではすでにDeep learningに着手しており、フランスだけでもAIのスタートアップは300社以上存在する。「米国に比べ3倍エンジニアがいるのではないか」とマーク氏。

 これはDeep Techに限ったことではないが、フランスではベンチャー投資総額の9割(出典元:Bpifrance「20 ans de capital investissement en france 1994-2014」)が政府から直接的もしくは間接的に出されている。政府の補助金を調達するためのコンサルティングファームも存在するほどだ。R&D(研究開発)に頻繁に投資する会社に大きめの税金控除も適用されるなど、こうしたバックアップがあるのは大きい。

いいDeep Techのスタートアップは欧州に眠っている

 では、なぜ日本企業が米国より欧州のスタートアップと相性がいいとされるのか。

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