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家がまるごとスマートスピーカーに? オンキヨーが描く「AIの未来図」(1/3 ページ)

» 2018年05月03日 08時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 音響機器メーカーのオンキヨーが、独自のAI(人工知能)プラットフォーム「ONKYO AI」を開発している。搭載ハードウェアは、今のところウエアラブルタイプと車載専用のスマートスピーカーという形を検討しているが、実はその先に“家がまるごとスマートスピーカーになる”ような壮大な構想も描いていた。オンキヨーがAIをどのように活用しようとしているのか、担当者に詳しい話を聞いた。

肩にのせる新しいタイプのスマートスピーカー

 オンキヨーは2017年の秋にGoogleアシスタントを搭載する「VC-GX30」、AmazonのAlexaを搭載する「VC-PX30」という2つのスマートスピーカーを国内のオーディオメーカーとしてはいち早く商品化したブランドだ。スマートスピーカーといえば、ボイスコマンドで音楽再生を操作したり、AIと会話ができることやスマート家電を音声で動かせることの斬新さが話題を呼びがちだが、オンキヨーの製品はとりわけ“音”に注力したことで注目されている。

AmazonのAlexaを搭載する「VC-PX30」(左)とGoogleアシスタントを搭載する「VC-GX30」(17年11月の発表会で撮影)

 でも、オンキヨーというブランドが最も特徴的なのは、開発のスピード感や音へのこだわりだけでなく、現時点でもうAIやスマートスピーカーがもっと私たちの生活に役に立つ手段で根付いていくための道筋を付けよういう意志が、製品やサービスから明快に伝わってくるところだと筆者は感じている。

 まずスマートスピーカーについては「据え置きタイプ」であることにこだわっているわけではない。今年の1月に米国ラスベガスで開催されたCESでは、他社に先駆けて肩に乗せて使う“ウェアラブルタイプ”のスマートスピーカーのコンセプトモデルを発表した。

オンキヨーが開発を進めているウェアラブルタイプのスマートスピーカーの試作機「VC-NX01」

 デザインは蹄鉄(ていてつ)型で、重さは約100g。ソニーやBose、JBLが発表した肩のせタイプのウェアラブルスピーカーと比べてサイズは圧倒的に小さく、軽い。最も大きな違いは、オンキヨーが独自に開発を進めているAIプラットフォーム「ONKYO AI」と連携するスマートスピーカーであるということだ。

 型名は「VC-NX01」と名付けられているが、発売時期はまだ明確にしていない。オンキヨーのAI/IoT事業戦略室 副室長の八木真人氏も「コンセプトモデルの段階なので、展示会で紹介した製品の仕様は今後変わる可能性がある」と前置きしているが、本機のコンセプトを知るために要点をいくつか触れておこう。

 まず、本機はBluetoothを使ってワイヤレスでスマホにつないで使うコンパニオンプロダクトになりそうだ。マイクとスピーカーを搭載する本機は音声入力のインタフェースになるし、音を聞くためのスピーカーでもあるが、ボイスコマンドの処理はマネージメントアプリを介してクラウド上にある「ONKYO AI」で行う。インターネット接続はスマホの通信機能を使うことになる。

 ウェアラブルスピーカーなので、アウトドアでの使用も想定している。そのため、本体には充電式のバッテリーを内蔵して、防滴・防塵仕様とすることも検討しているようだ。屋外でも気兼ねなく使えるように、マイクとスピーカーには指向性を高めるビームフォーミング技術を活用する計画もあるという。

 今年4月の展示会にオンキヨーが出展した際、筆者も初めてVC-NX01のプロトタイプで音楽を聞く機会を得た。スピーカーの開口部は本体を肩にのせたとき、両耳の真下にくるように上に向けて配置している。なかなかパワフルな音だったが、ビームフォーミングにはまだ対応していなかったので、これから小音量再生時にもシャキッとした音が聞けるようになるのか楽しみだ。

独自に開発を進めるAIプラットフォーム「ONKYO AI」とは

 ONKYO AIについても現時点で分かっていることをまとめよう。オンキヨーではGoogleやAmazonのように、AIテクノロジーを構成するすべての技術を自前で作ることは目指していない。他社のリソースを上手に活用しながら、オンキヨーの製品に最も適したAIテクノロジーを、オンキヨー製品の独自性を追求しつつコストとのバランスを取り、最も良い形でユーザーの手もとに届けることが最大の狙いだ。

 筆者はこれまでに何度かONKYO AIの取り組みを取材してきたが、そのたびに八木氏は「GoogleやAmazonにAI対決を仕掛ける意図は毛頭ない」と繰り返し述べている。オンキヨーは、今後も両社のAIアシスタントを搭載したスマートスピーカーの開発は続けていく。また「ONKYO AI」のプラットフォームに組み込むことが機能とコスト面で有効であると判断すれば、ためらいなくこれを押し進めることについても明言している。

4月に国内で開催されたAI・人工知能の展示会に出展したオンキヨーのブースを訪問。ONKYO AIの取り組みについてオンキヨー AI/IoT事業推進室 副室長の八木真人氏に詳細を聞いた

 ONKYO AIの音声アシスタントには特定の名前が付いていないが、「アラジンと魔法のランプ」にちなんだ「ハロー、ブルージーニー」というフレーズがトリガーワードになっている。最初に音声で入力されたコマンドをセンサリーが開発した認識技術で読み込んだあと、サウンドハウンドの「Houndify」に送りスピーチ音声/テキスト変換と自然言語理解のアルゴリズム解析を行う。製品開発に携わっているオンキヨーの近藤裕介氏によると、Houndifyの自然言語理解のアルゴリズムが優秀であるために、ONKYO AIでは単語・単発での音声コマンド入力だけなく、AIアシスタントと自然な会話を楽しむように連続したコマンドのやり取りができるようになるという。

VC-NX01の詳細についてはオンキヨー 開発本部 開発技術部 第1開発技術課の課長代理 近藤裕介氏に聞いた

 4月の展示会でONKYO AIのデモンストレーションを体験した時には、例えばユーザーの行動パターンを専用のマネージメントアプリを入れたスマホで管理しながら、ディープラーニングやGPSロケーション情報の解析技術などを活用して、ユーザーがやりたいことを「先読み」しながら提案できるAIのプロトタイプを目の当たりにした。Houndifyの技術を活用した対話形式のコマンド入力を組み合わせると、例えば以下のような応答も実現する。

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