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電車で(Oculus)Goやってみた新連載「Oculus Go! Go! Go!」

» 2018年05月14日 16時01分 公開
[松尾公也ITmedia]

 Oculus Rift、HTC VIVE、PS VRのVR御三家が登場したVR元年、2016年から2年。ついに登場した、スマートフォンもゲーミングPCも不要なスタンドアロンのOculus Go。これを使ってみた連載がスタート。

 Oculus Goを持って、街に出よう。電車に乗って、映画を見よう。ドラマを見よう。

 筆者はたくさんのビデオサブスクリプションサービスに加入している。Hulu、Amazonプライムビデオ、ニコニコ動画、Netflix、AbemaTV、GYAO!は毎週なにがしか見ている。夜は枕元に設置したアームにiPhone Xを装着して寝落ちするまで見る。

 通勤時には1時間もの番組の2話分くらいをiPhone Xで見終わるだけの時間がある。だが、電車内での視聴には大きな問題がある。車内の照明や自分の顔の映り込みでとても見づらいのだ。特に海外ドラマは暗いシーンが延々続くことが多いので、せっかくの高精細有機ELも恩恵を受けられない。

 映り込み防止用のiPhoneケースを探してみたが適当なものがない。反射防止フィルムも付け外しができないし、そもそもフィルムは付けたくない。反射が完全に防げる保証もない。だが、完全に映像に没入できる方法がある。

 「Oculus Go」を買うのだ。

 Oculus GoはSamsung Galaxyを組み込んで使う「Gear VR」の流れを汲むワイヤレスVR HMD(Virtual Reality Head Mounted Display)。アプリの互換性もある。大きな違いはGalaxy端末を買う必要がないことだ。Xiaomiが製造で協力しており、同社製のAndroidスマートフォン相当ハードウェアが組み込まれているWi-Fiデバイス。Xiaomiのロゴと技適マークが入って日本で合法的に使える最初の製品とも言われている。

 そしてこのHMDの出来がすこぶるよい。2万円台で入手できる動画再生デバイスとしては最高なのではないだろうか。

 その昔、VR機能はないが動画視聴に特化したヘッドマウントディスプレイとしてソニーの「HMZ-T1-T3」、オリンパス「Eye-Trek」が販売されていた。その系譜は日本では途絶えてしまったようだが、その代替用途で使えるのではないかと。

 2万3800円からというOculus Goのコストパフォーマンスの高さには多くの人が目をつけていて、いち早く手に入れた人たちが様々な試みをしている。筆者もこのビッグウェーブに乗ってみようと考えた。

 そこで電車で(Oculus)Goだ。さっそくやってみた。

電車でGo!

 まずは地元の西武池袋線 石神井公園から会社のある有楽町線 麹町まで、Oculus Goを装着して乗車。Oculus Goの装着は自転車のヘルメットをかぶるより簡単だ。Oculus Riftではメガネを着けたままかぶるのは難しく、フレームの幅が狭いメガネにしてゴーグルの内部を加工する必要があったが、Oculus Goではその必要はない。メガネを着けたままそのままかぶることができる。かなり幅広のフレームでも大丈夫だったという報告もある。

 乗車前にかぶるのは危険なので、乗車して座ってからカバン(ひらくPCバッグnanoがピッタリサイズ)からOculus Go本体とリモコンを取り出す。イヤフォンは最初からつないでおく。イヤフォンなしだと、HMD内蔵スピーカーから音が盛大に漏れてしまうからだ。リモコンはストラップを手首に巻いておく。

 その初日の様子がこの動画だ。いきなり電車は難易度が高いので、人の少ない近所の公園でリハーサルし、気持ちを落ち着けてから乗り込んだ。

photo 西武池袋線でOculus Goを装着

 だがこのままではWi-Fiスポットに偶然めぐり逢うまではオフライン状態なので、もう一手間必要だ。iPhoneのインターネット共有をオンにしておく(モバイルルータでもいい)。一度接続しておけば自動的にコネクションを張ってくれるので、どこかで先にやっておこう。これで、ネット接続された状態でOculus Goを装着できる。

 HMDをかぶるまではドキドキだったが、装着してコンテンツに没入するのは一瞬。Netflixアプリを立ち上げて「ソードアート・オンライン」を再生。「リンク・スタート!」と叫んでみる。もちろん、心の中で。

 動画ストリーミングサービスで専用アプリが用意されているのはNetflixだけ。Huluアプリもあるが、日本のHuluはHuluのようでHuluでない(ドメインもhappyon.jp)なので使えない。ではどうするかというと、Oculusの内蔵Webブラウザ「ブラウザー」を使うのだ。

 何も知識のない状態だと、このブラウザで使えるのはYouTubeだけ。それ以外のサービスは対応してくれない。モバイルデバイスとみなされて、アプリをインストールしろと言われるのだ。たしかにOculus GoはXiaomiのAndroidユニットが入っているのだが。

photo YouTubeは簡単に「ブラウザー」で視聴できる

 抜け道はある。「ブラウザー」には「デスクトップをリクエスト」というボタンが用意されている。このボタンは名前が紛らわしいが、「PCビュー」のことで、デスクトップPCのブラウザとして振る舞う。このボタンによって、Amazon Prime Video、Hulu(日本の)、AbemaTVなど、Web視聴が可能な動画サービスがOculus Goに対応した。

 で、実際に動画を視聴してみた。初日は西武池袋線、有楽町線、山手線で合計1時間くらいHMDをかぶっていた。やってみてわかったことがある。

ずれていく問題

 Netflixアプリにしても、Webブラウザで見ている動画サイトにしても、電車が動いていくにつれてだんだん正面からずれていくのだ。電車の加速と減速、カーブなどがジャイロに影響するのだろう。そう極端な動きではないので、気づいたらリセットすればよい。Webブラウザの場合には、リモコンの「Oculus」ボタンを長押しすると正面リセットできる。

 Netflixアプリの場合はさらによいモードがある。スクリーンの左上にある「VOID THEATER」をクリックすると、空間に何もない(VOID)な劇場となり、そこでは画面位置の変更、スクリーンの拡大縮小、そしてドライブモードが設定できるのだ。

 ドライブモードにしておくと、大きく画面が動くことがなくなる。少しは動くが、その場合には画面位置の変更で元に戻すといい。

 Netflixは画面を最大限まで拡大することができるので、自宅ホームシアターで視界いっぱいの迫力のある映像にすることもできる。画像のピクセルは目を凝らさないと判別できない(筆者には)。これだけのスクリーンサイズと画質のホームシアター、どのくらいの金がかかるのだろうか。それが2万円台の前半で実現するのだ。しかも、電車の中で使える。我が家の100インチスクリーンとプロジェクターは出番なしになりそうだ。

 これだけの可能性を秘めたデバイスを家の中だけに閉じ込めておくのは実にもったいない。かつてウォークマンが音楽をステレオセットから解放したように、Oculus Goは映画、ドラマなどの高精細コンテンツを持ち出し、最高レベルの体験をさせてくれる。

 「キモい」などは小さな問題だ。思い出してほしい。かつては電車の中でノートPCを開くのにも勇気が必要だった。飲食店でもそうだ。スマートフォンのフリックも奇妙に思われるような気がしたものだ。だが人は慣れる。

 電車の中にはマスクをした人もHMDをかぶった人もいる。それを日常にしてしまえばいい。フラッシュモブのようにデモ的なものではなくて、そういう人増えてきたよね、となるように。

photo HMDを車内で装着しても「犯罪」ではありません

 というわけで、みなさんもどうぞ。

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