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カシオがもたらしたデジカメの歴史を振り返る(4/4 ページ)

» 2018年05月19日 08時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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スマホへの自動転送機能を初めてつけたのもカシオだったが

 と、こうしてQV-10からの歴史を概観してみると、カシオは何度もコンパクトデジカメのトレンドを作り、(時には失敗もしつつ)新しいジャンルに挑戦してきた会社というのが分かる。

 往年の「カメラ」という枠に囚われない製品を作ってきただけに、今回の撤退は実に残念。

 さて話ははじまりにもどり、おわりがはじまる。

 1995年、カシオは「ビジュアルコミュニケーション」をコンセプトにQV-10を作った。それがカシオの原点であり、ときどき市場に振り回されはするものの、煮詰まると「ビジュアルコミュニケーション」という原点に立ち返った新しい製品を作り出してきたわけだ。

 でも、2008年のiPhone 3Gを筆頭に、スマートフォンが普及し、カメラ機能が向上するに従って、「ビジュアルコミュニケーション」ツールの主役の座が完全にスマートフォンに移る。

 「コミュニケーション」はスマートフォンが一番得意とするところ、というかそれが本職だからだ。

 カシオも当然それを分かっているわけで、いち早くBluetoothを利用したスマートフォンへの自動転送機能を開発し、スマートフォンと連携を図ったが、それでも大きな流れには抗えなかったといっていいんじゃなかろうか。

 頼りだった東アジア市場の自撮りカメラTRシリーズも、中国韓国系のスマートフォンがカメラ、特に自撮りにすごく力を入れてきておりクオリティもここ1〜2年で飛躍的に上がった影響を受けたと聞いている。

 カシオがQV-10で目指したビジュアルコミュニケーションのためのカメラという新しいジャンルはスマートフォンに受け継がれたのである。

 映像事業から完全撤退というわけではないそうなので、「カメラ」という型に囚われない、新しいジャンルの製品をまた作って欲しいと願う次第。

 そんなわけで、最後に、カシオが最初に出したQV-10と、最後に出した(日本未発売の)「TR mini」(TR-M11)のツーショットをどうぞ。QV-10はわたしの私物。TR miniは山田久美夫さん所蔵のもの。先日ヒマナイヌスタジオで行われたイベントでの撮影です。

左が自撮り専用の「TR mini」。山田久美夫さんいわく「テクマクマヤコン」。右が1995年発売のQV-10。こちらは世界最初の自撮り対応デジカメ。それをカシオの「ZR4000」で撮影した
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