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» 2018年06月25日 13時58分 公開

「顔認識防止グラス」「指紋復元妨害シール」――機械を“だます”技術 国立情報学研究所開発

「かけるだけで顔認識できなくなるサングラス」「指に転写するだけで指紋を盗めなくなるシール」――このように機械を“だます”技術を、国立情報学研究所(NII)が開発している。

[井上輝一,ITmedia]

 「かけるだけで顔認識できなくなるサングラス」「指に転写するだけで指紋を盗めなくなるシール」――このように機械を“だます”技術を、国立情報学研究所(NII)が開発している。

 これらは、情報セキュリティや匿名化技術などを研究しているNIIの越前研究室が開発。NIIが研究成果を一般向けに公開するイベント「国立情報学研究所 オープンハウス 2018」(6月22〜23日)で披露した。

顔認識防止グラス「プライバシーバイザー」

プライバシーバイザー。奥が第2弾モデル、手前が第1弾モデル

 スマートフォンの普及でカメラがより身近になったことで、他人の写真に意図せず映り込んでしまい、ネット上に掲載された結果、顔認識によって自動で個人が特定されてしまう――。そんなプライバシーの侵害が社会問題になっているとして、越前研究室は「顔認識を“撮影される側”で防止する新技術」を世界で初めて開発したという。

 「プライバシーバイザー」と名付けられた顔認識防止グラスは、既に第2弾まで制作した。第1弾は全体に白い幾何学模様が描かれたフィルムタイプのもので、第2弾は実際に遮光効果もあるサングラスタイプのものだ。

 第1弾モデルは装着するだけでAIによる顔認識ができなくなる。第2弾モデルはグラス部分に跳ね上げ機構を備えたことで、顔認識が可能な状態(跳ね上げ前)と、できなくなる状態(跳ね上げ後)を切り替えられる。

プライバシーバイザープライバシーバイザー プライバシーバイザー第2弾モデルの跳ね上げ前(左)と跳ね上げ後(右)

 どちらのモデルも、顔検出の原理に「目の部分は頬よりも暗い」「両目はその中間よりも暗い」といった情報が使われていることに着目して開発した。グラス部分を跳ね上げると、室内照明や太陽の光を反射するようになり、目の部分がかえって明るくなる。すると、機械による顔認識が難しくなるという。

利用時利用時 プライバシーバイザーを実際に装着してみたところ。跳ね上げ前は顔として認識されるが、跳ね上げ後は認識されていない

 プライバシーバイザーの製造は、眼鏡の産地として知られる福井県鯖江市で行われている。第2弾モデルは鯖江市に2万円以上寄付すると入手可能だ。

「写真から指紋盗む」指に転写するだけで防げるシール

 スマートフォンなどでも広く使われるようになった指紋認証。指に型を押しつけるといった物理的な窃盗の他に「写真から指紋を再現する」という盗み方もある。

 これに対し越前研究室は、ジャミングパターンをステンシルシートで指先へ転写することで、写真から指紋を復元されるのを妨害する手法「BiometricJammer」(バイオメトリックジャマー)を開発した。

BiometricJammer

 指紋認証の原理は、指紋の線から「線の端」や「分岐点」といった特徴点の配置を比較するといったもの。写真からでも十分な解像度とピント、コントラストがあれば指紋を読み取れてしまう。

 BiometricJammerでは、本人の指紋の上に疑似的な指紋のパターンを重ねることで、写真撮影では偽の特徴点が生み出される。これにより、写真から指紋を復元しようとしても本人の指紋との一致率が下がり、認証を妨害できるという。

 越前研究室スタッフで、本手法を開発した1人である大金健夫さんは「タトゥーシールのようなものなので、転写してから1日程度は有効。写真からの指紋復元を防ぐ一方で、iPhoneなどの指紋認証センサーは写真とは検出方法が異なるため、阻害せずに使える」と説明する。

 BiometricJammerは、特許を出願済み。現在、モックの作製など商品化に向けて研究を進めている。

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