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冗談ではない! AIロボット「ハロ」との会話がディープ過ぎた件(2/3 ページ)

» 2018年07月02日 17時21分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
付属の台座に置いたところ。この状態でも話している人の方を向く

 オンライン状態のハロは、IBMが構築した「ガンダムの内容に特化した会話システム」のAIで話の意味と意図を分析し、データベースから最適と判断した回答を選び出す。例えば「ガンダムについて教えて」と言えば、「ガンダム、連邦軍モビルスーツ」と説明を始める。

 説明には複数のパターンが用意されているようで、中には「ガンダム、連邦の白い奴」と明らかにジオン軍目線の説明も。また「今日はシャアの話がしたいな」と言えば、「シャア・アズナブルか。シャア専用機たくさんもってた」と一年戦争経験者らしい説明が聞けるのも面白い。

 AI会話のポイントは、ハロが単に単語を認識しているのではないということだ。大江さんによると「例えば“ガンダムの強さ”を聞いたとき。ガンダムという単語だけを拾っては強さや戦いに関する話ができません。話者の話全体を分析し、内容を判断しています」という。

ハロは質問の意図をくみ取ると大江さん

 試しにハロに「ガンダムとザク、どっちが強いの?」と聞いたところ、「ハロ、性能比較不可能」と返した。明確な答えを出すことはできなかったが、単に「ガンダム」や「ザク」という単語を拾っただけではこうはいかない。質問の「両者を比較する」意図をくみ取り、その上で返答していることが分かる。もっとも「答えが見つからないので、ハロ流の逃げ方をしたようですね」

コミュケーションは止まらない

 会話の内容は1979年放送のアニメ「機動戦士ガンダム」に関することに限られる。これは版権などの問題ではなく、「例えばテレビアニメと映画三部作では、登場するモビルスーツが代わっているなど異なる箇所がいくつかあります。整合性をとるため、今回はテレビアニメ版に限定しました」(バンダイ新規事業室 BN・Botチームアシスタントマネージャーの所学さん)

ハロの知識はテレビアニメ「機動戦士ガンダム」に限定したと話す所さん

 その代わり、テレビアニメに関してはとても“深い”。例えば「ハロからのクイズ、ギャン(の)型式番号は?」と問われて即答できる人はガンダムファンの中でもごくわずかだろう。もちろん「ハロ、難しいよ」などと降参すればハロは答えを教えてくれる。「ギャン、型式番号YMS-15」。

 ハロのうんちくは止まらない。「ギャン、シールドにミサイル発射装置付いてる」「ギャン、重量52.7トン」。他にもギャンのパイロットだったマ・クベ大佐の趣味のつぼや上司の話題まで、狭くて深い、日常生活では全く役に立たない知識を大量に伝授してくれる。大江さんは「IBMさんの音声AIですから。よく壮大な技術の無駄遣いだと話しています」と笑う。

 ガンダムの知識はすごい一方で、ハロは自分が知らない話題については華麗にスルーするスキルも身につけていた。ハロがアムロについて語っているとき、「ハロ、スカイツリーの高さ教えて」と質問したところ、しばらく考えた後で「アムロ、性格内向的」と続けた。「データベース上に近い言葉が見つからず、以前の話を続けておこうと判断したようです」(大江さん)

 実は、このようにフワッとした内容でも「返答すること」が、ユーザーとの対話を続ける上で重要だという。コミュニケーションロボットが自らコミュニケーションを遮ってしまっては役目を果たせない。質問をスルーしても話を続け、ユーザーの興味を引き続けることが次のコミュニケーションにつながる。

 幸い、ハロの場合は分からない質問をスルーしてもそれがマイペースに見え、ハロらしいと思われる。「原作でも基本的にハロはあまり感情をもっていませんよね。良くも悪くも機械的に話すキャラクターで、そこは忠実にしています」。それはファンが望むハロの姿でもあるだろう。

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