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» 2018年08月06日 08時00分 公開

アニメに潜むサイバー攻撃:「個別の11人事件」は現実に起こせるか 「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」のゾクっとする話 (5/7)

[文月涼,ITmedia]

F: 火薬庫になりそうな特定のベクトルを持っている人を探して誘導するには、SNSのターゲティング広告を使います。直接、爆発に結び付きそうな話題に触れなくても、複数の広告ターゲットから対象を細かく絞り込んで、釣り上げるメッセージを打ち込むことができます。その上で「個別の11人」の本に相当する、さらに対象者を絞り込むトラップを作る。なかなかたどり着けないように、ダークウェブにウイルスを仕込んだサイトを作り、何か興味を引くようなレアな情報があるらしいという情報を、ゼロデイ攻撃が成立する日にトラップを仕掛けた上で流すわけです。

 飛び付いた訪問者がウイルスに感染したら、PCなりスマートフォンなりを介して、その人間の個人情報を特定します。そうすると趣味趣向などが丸見えになりますから、後は、相手のルサンチマンに火を付ける思想誘導情報を目に付くところに置いたり、米大統領選でも登場したネット経由の扇動工作員、いわゆる「トロール」を使ったりして、掲示板やSNSなどで、「あなたは選ばれた人でやるべきことがある」「行動を起こさねば」といったことを吹き込むか、あるいは絶望させるわけです。日本では銃の所持や爆破の入手が厳しく規制されていますが、海外ならば、大規模なテロにつながるわけです。

photo (c)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

 昔ならば犯罪は姿を現してやらなければならなかったが、サイバー空間では姿を現さないで行えるようになった。従って、扇動もサイバー空間なら姿を現さないでできる……このストーリーのように。

K: 今回はずっしりした話ですね……。

F: ところで話は戻りますが、インセルの人々はいろいろとこじらせてはいても、だからといって全ての人が過激な思想を持つわけではありません。それぞれが負った複雑な事情があるが故であり、またインセルに手を差しのべる人々もいることは付記しておきたいと思います。危険の可能性に常に気を配りつつ、同時に距離・場所を越え助け合う。インターネットのこちらの側面こそが、われわれが目指す次のステージだと思います。

指導者クゼは、IT時代の独裁者?

F: もう1つ、怖いなと思ったのは、クゼの存在です。

 ゴーダが仕掛けたウイルスから逃れることに成功したクゼは、自らの考えで難民の指導者となります。自分もウイルスを開発し、銀行などのオンライン決済をハック。取引の「1円以下の見えない端数」を徴収することで、100億円以上の資金を集めます。現実では仮想通貨のマイニングを悪用し、テロ資金を稼ぐという方法が考えられますね。

 しかし、そういったテクニックよりも驚いたのは、300万人の難民の電脳とつながり続ける、という点です。接続してくる電脳をゾーニングとフィルタリングで選別はするものの、自分の電脳に300万人もの難民が接続することを許し、常時彼らの質問に答え続けながら、自らの目指す方向性に導き、意識の並列化を図ります。

K: 300万人から常に質問し続けられるって、想像も付かないですよ。

F: 現代でいえば、Twitterで300万人のフォロワーがいて、そのリプライにいちいち答えるという感じかと思いゾッとしましたが、それではあまりに現実離れしている。そこで彼の電脳スキルで現実的な解を想像してみました。

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