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» 2018年10月10日 11時43分 公開

「いじめ」と戦うLINEの執念 (1/2)

「LINEいじめ」という言葉が発明され、目の敵にされて5年。LINEはいじめ問題にどのように取り組んできたのか。

[小寺信良,ITmedia]

 LINEは9月26日、自社で推進する社会貢献事業(CSR)の報告会として、「LINE CSR Meeting」を開催した。

 LINEというサービス誕生のきっかけは、2011年の東日本大震災まで遡る。地震発生後から関東主要都市では携帯電話網は輻輳が起こり、かなりの範囲で使えなくなった。一方インターネット網は部分的に回線が切断されても、迂回して届く性質を持つため、ある程度の利用は可能であり、復旧も早かった。

 当時のことをよく覚えている人も多いことだろう。Twitterの全盛期であり、多くの情報が飛び交ったが、個人の安否や、家族・友人間で緊密に連絡を取り合うには向いていないツールであった。ネットの可能性を感じさせながらも、同時に限界も見えたのではないかと思う。

 LINEはこうした経験から、人と人との絆を繋ぐホットラインとして設計された。それゆえに同社は、社会貢献事業に対する熱量が高い企業でもある。

 今回報告されたのは、防災・減災活動、いじめ問題対策、情報モラル教育、子育て支援など、多岐にわたる。この中でも今回は、いじめ問題対策にフォーカスしてみたい。

「LINEがあるからいじめられる」のか

 「LINEいじめ」なる言葉をご存じだろうか。クローズドなコミュニケーションツールであり、グループチャットが可能なLINEでは、時としてグループ内での仲間はずれなどのいじめが起こりやすいとされてきた。

 「LINEいじめ」というワードの初出は、Twitter検索によれば2011年11月のようだ。LINEのサービス開始が2011年6月23日なので、半年もしないうちにこうした現象に名前が付けられたことになる。

 メディアがこのワードを取り上げたのは2013年頃で、Twitter上の「学校がLINEを利用禁止にした」という投稿を取り上げたのが最初のようである。

 LINEいじめという言葉が「発明」されて以降、LINEは学校から目の敵にされることになる。筆者もインターネットユーザー協会代表理事という立場から、小中高校にネットリテラシーの講演に赴く機会が多いが、時として「私LINE撲滅委員会の委員長を自認しております」と誇らしげに言う校長先生に出会うことがある。

 だが、LINEがあるから、あるいはネットやスマホがあるからいじめが起こるのだという認識は、誤りである。安心ネットづくり促進協議会調査研究委員会が2013年に取りまとめた「[インターネット利用といじめ・暴力の関係性に関する研究」(PDFへのリンク)では、リアルでのいじめがないのにネットだけでいじめられたというケースはほとんどないことが明らかになっており、「ネットを使用した仲間内攻撃行動を受けている被害者とネットを使用しない仲間内攻撃行動を受けている被害者は重なっており……」とまとめている。リアルとネットはシンクロしており、いじめられるなら両方だし、いじめられないならどちらでもいじめがない、というわけである。

 つまりいじめの問題は、「LINEいじめ」だけを対処しても解決にならず、リアルでのいじめも含めて総合的に対処しなければならないことがわかる。

 LINE 公共政策室室長の江口清貴氏は、当時をこう振り返る。

 「LINEが誕生して約1年後に、サービスに起因する子供のトラブルなどいろんな問題が山積してきて、その解決のために他社から呼ばれてきたのが私であります。当時LINEいじめとか、いろんな言葉が生まれました。それは一体なんぞやという話からスタートしました。既存のいじめではなく、LINEいじめという新しい形態が生まれているのだろうと思って、学校現場を回ろうとしたんですが、行く先々で罵声を浴びるわけです。LINEが何しに来たと。LINEというサービスを止めればいじめは止まるという。ほんの数年前の話です」

photo LINEの江口清貴氏

 「そこでひるむのではなく、逆ギレをしまして。どうせ対策をやるなら本気でやってやろうと。大学の先生には全く付き合いがありませんでしたが、一から掘り起こして、一緒に教材を作り始めて、啓発活動をやってきました」

 「当時はLINE自体がいじめの温床、LINEがあるからいじめが起こると言われていました。それが本当だったら、LINEをなくせばいい。しかし有史以来、いじめは起こっている。過去どのサービスでも、トラブルはあったわけです。つまり、サービスが変わってもいじめは起こりうる。ではなぜ起こっているのか。わからないから一つ一つ調査をして、憶測や思惑ではなく、エビデンスベースで対応していく」

大津市×LINE

 LINEは現在、多様な社会貢献のために、多くの自治体や国の組織との連携協定を結んでいる。いじめ問題に関しての取り組みも、現在長野県と、滋賀県大津市で協定を結び、LINEを使ったいじめ相談システムを動かしている。

 今回の報告会では、大津市長の越直美氏が招かれ、市長自ら大津市による取り組みを報告した。

photo 登壇した大津市長、越直美氏

 大津市では2011年10月、いじめを苦にした中学生が自殺するという事件が起こった。これをきっかけとして「いじめ対策推進室」が立ちあがるわけだが、発足するまでに1年半を要した。

 越氏が2012年に史上最年少の女性市長となったあと、第三者調査委員会による調査を行おうとしたが、教育委員会の反対にあう。

 「再び事件のことを子供たちに聞くのは、子供たちが傷つく。教育的配慮である」

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