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ワコム、世界初の直営店は“売らないショップ” 狙いは

» 2018年11月16日 14時06分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 ワコムは11月16日、初の直営店「ワコムブランドストア」を新宿マルイ アネックス(東京都新宿区)内にオープンした。製品を試すことに特化した“体験型”ショップで、販売は行わない。井出信孝社長は「ECサイトなどでもワコムの製品は買えるが、手で使うものだからこそ『実際に試したい』という声は多い。しっかりと試して、安心して製品を購入してもらえれば」と話す。

photo 新宿マルイ アネックスの3階にオープン

 店内には、液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro」シリーズや、手書きメモをデータ化して保存できる「Bamboo Slate」など、クリエイター向けの製品を取りそろえた。液晶ペンタブレットは広いデスクに設置し、椅子に座ってじっくりと試せるようにした。製品知識豊富なスタッフが来店者の作業環境に合わせた製品を勧めるなど、個別相談も受け付ける。

photo 液晶ペンタブレットがずらり
photo プロ向けの大型モデルも
photo Bamboo Slate

 井出社長は「製品を試せるポップアップストアを3月にオープンしたところ、お客さまから『常設にしてほしい』という声をいただいた」と振り返る。ワコムの35周年記念のタイミングとも合わせ、直営店の常設を決めたという。

 初出店の立地でこだわったのは、クリエイターとの親和性だ。新宿マルイ アネックスはアニメイベントを頻繁に開催している他、画材などを取り扱う「世界堂 新宿本店」にもほど近い。それらに訪れた客がワコムの直営店に立ち寄り、製品をじっくり試す――といった利用シーンを想定している。

 丸井グループの青木正久執行役員も「アネックスはマルイの中でもアニメ事業に力を入れている場所。クリエイターとの親和性も高い。ワコムブランドストアを入れることで、集客などの相乗効果を狙いたい」と話す。

 「マルイなのに“売らない店”というのは奇異に思われるかもしれないが、世の中は今、モノ消費からコト消費に動き始めている。店で商品の価値を体験してから、ネットや別の店で購入するというスキームを作りたい」(青木執行役員)

 ワコムの製品は高額なものも多いため、「分割払いなどでマルイのクレジットカードを使ってもらえれば、マルイの利益にもつながる」(青木執行役員)と考えているという。来店者向けのポイント特典サービスなどを実施することで、カードの利用を促す。

photo 店舗のオープンイベントの様子。中央がワコムの井出社長、右が丸井グループの青木執行役員

 ワコムは今後、ブランドストアを通じて顧客の声を拾い上げ、製品開発や改善に生かすとしている。「お客さまと直接対話させていただくことが、次の製品を生み出すエネルギーの源泉。ブランドストアでお客さまにプロトタイプを試していただき、一緒に製品を作り上げるような取り組みもしていけたら」(井出社長)

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