ITmedia NEWS > AI+ >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

遠隔地の体験共有する“分身”ロボットの可能性 旅も仕事も「今すぐここで」 特集・ビジネスを変える5G(2/3 ページ)

» 2018年11月29日 13時00分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 そんなテレイグジスタンスロボットの起源は、1980年までさかのぼる。東京大学名誉教授の舘ススム(ススムは日へんに「章」)さんがテレイグジスタンスを提唱し、システム開発をスタート。1989年には、操作者の動きを反映して動く人型ロボット「TELESAR」を開発し、改良を進めてきた。当初は、操作者用の装置とロボットを有線接続して動かしていたが、商用化に向けてTelexistenceが改良した際、今のようにインターネット経由で人間の動きを反映する仕組みに変更したという。

photo TELESAR(舘研究室のテレイグジスタンス小史より)

 仕組みの変更は、KDDIがTelexistenceに出資するきっかけにもなった。KDDIの中馬和彦さんによると、同社はTelexistenceの富岡仁さん(共同創業者兼CEO)がKDDI傘下のSupershipに勤めていた縁で、以前からテレイグジスタンスロボットを知っていたが、「テレイグジスタンスロボットに通信機器としてのポテンシャルが生まれた」ことが、本格的な支援につながったという。

遠隔操作を生かした「働き方改革」の可能性

photo KDDIの中馬さん(ライフデザイン事業本部 ライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長)

 中馬さんは、テレイグジスタンスを「遠い場所の映像や感覚を、あたかもそこにいるかのように感じられる汎用(はんよう)的な技術」と説明する。旅行体験はあくまで活用アイデアの1つであり、「メインの使い道は別にある」という。

 中馬さんが考える「メインの使い道」とは、働き方改革だ。ロボットを活用した働き方改革には、決まった動きをロボットに代行させて自動化する取り組みもあるが、「欠品商品の在庫だけを補充する」といった業務はパターン化が難しく、単純にロボットで置き換えることはできないという。しかし、テレイグジスタンスロボットを使えば「例えば東京にいる人が、沖縄のコンビニの棚を補充することもできる」と見込んでいる。

photo 遠隔地のカフェ店員としてロボットが働く様子(「CEATEC JAPAN 2018」のKDDIのデモンストレーション)

 さらに、テレイグジスタンスロボットで使う「人間の動作データ」の応用も検討している。「完全な自動化が難しい欠品補充のような動作にも、一定のパターンはある。人間の行為をデジタルデータにしてAIに機械学習させれば、動作をパターン化できるのでは」(中馬さん)。パターン化した人の動作をロボットやAIに置き換え、店舗などで活用することも視野に入れているという。

 だが、テレイグジスタンスロボットの実現に向けては課題も多い。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.