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» 2018年12月07日 17時14分 公開

特集・ビジネスを変える5G:西暦202×年、工事現場から人が消える (1/2)

近い将来、危険な工事現場や災害現場で作業する人は激減するかもしれない。5Gの高速大容量通信により、建設機械の遠隔運用が実現するからだ。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 近い将来、危険な工事現場や災害現場で作業する人は激減するかもしれない。5Gの高速大容量通信により、建設機械(以下、建機)の遠隔運用が実現するからだ。既に国内の大手キャリア——NTTドコモは小松製作所と、ソフトバンクは大成建設と、KDDIは大林組と——それぞれ手を組み、遠隔施工の実証実験を進めている。

 今年10月、幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2018」。小松製作所は自社ブースに遠隔施工用のコックピットを持ち込み、千葉市美浜区にある「コマツIoTセンタ東京」と光回線でつないだ。IoTセンタにはエリクソンの5G基地局が設置され、オペレーターはブルドーザーのカメラが捉えたリアルタイムの4K映像を見ながら操作し、地面をならしていく。

「CEATEC JAPAN 2018」の小松製作所ブース。自律運転に対応した油圧ショベルとクローラダンプの実機を展示した

 映像は主に4つの画面があり、いずれも4Kの解像度。ソリトンシステムズが開発した可変圧縮技術で1画面あたりのビットレートは平均30Mbps程度になっているという。小松製作所の嶋田健二郎氏(開発本部 車両第二開発センタ情報化建機開発グループチーム長)は、4Kを採用した理由について、「奥行き感や地面の凹凸まで分かる緻密(ちみつ)な映像があると操作感覚が全く違う」と指摘する。現場の状況を把握しながら効率的に作業するためには高解像度の映像が有効だという。

遠隔操縦に使用するコックピット

 オペレーターの安全確保のため、建機を遠隔操縦するという試みは決して新しいものではない。広く知られるようになったのは、1991年の雲仙普賢岳噴火後の復旧作業だった。小松製作所も協力したが、嶋田氏によると「当時は映像が粗く、あまり実用的ではなかった」という。

 現在ならWi-FIや4G-LTEが使われるが、「4G LTEの速度では4Kは1画面でも厳しい。Wi-Fiはビットレートこそ出せるが、基本的に宅内の無線規格のため品質がコントロールしにくい」と指摘するのは、NTTドコモの志水紀之氏(5Gイノベーション推進室 5G無線技術研究グループ)。ここでいう品質とは、映像や制御信号の遅延を指す。

 「リモート操縦の場合、建機を問題なく動かすために遅延時間は100ミリ秒以内に抑えることが目標になる。Wi-FiやLTEでは早くても200〜300ミリ秒と十分ではない」(志水氏)

 遠隔操縦のメリットは、災害復旧作業など危険を伴う現場でも作業員の安全を確保できることと、作業の効率化だ。例えば難易度の高い工事に熟練したベテランオペレーターがあたる場合、遠隔地からのリモート操縦であれば「北海道の現場の後に九州の現場」といった具合に移動や準備にかける時間を省き、人的リソースの有効活用につながる。

コマツブースのステージでは未来の現場イメージを披露。オペレーターは自宅でVRゴーグルを身につけて作業にあたる
オペレーターが見ている映像

 また、「ショベルカーで土砂を掘り、ダンプトラック2台で運ぶ」という現場なら、通常は3人以上の作業員が必要だ。しかし複数のトラックが行き来する現場はどうしても待ち時間が発生するため、リモート操縦のコックピットで1人が建機を切り替えながら作業したほうが効率は良く、人的リソースと時間の削減にもつながるという。

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