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ビジネスを変える5G

約20年も変わらなかったゲーム作りが「5G」で進化する? メーカーが考えるスマホゲームの未来特集・ビジネスを変える5G(1/2 ページ)

» 2018年12月28日 08時00分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 スマートフォンを手にしながらゲームに興じる人を見ない日はほとんどなくなった。一昔前に携帯端末で遊べるゲームといえば、パズルやブロック崩しのようなカジュアルゲームが多くを占めていたが、今や専用機にも劣らない美しいグラフィックスやサウンド、オンラインによる連携が当たり前の時代になった。スマートフォンの特性を生かした位置情報ゲームが巻き起こした社会現象も記憶に新しい。

photo 「Pokemon GO」配信スタート直後の週末。新宿御苑にて

 ハードウェアの進化に合わせて表現力も豊かになっているスマホゲーム。2020年以降にはさらに大きな変化として、次世代のモバイル通信方式「5G」がやってくる。「高速・大容量」「低遅延」「多接続」といった特徴を持つ新しい通信技術が、身近なスマホゲームにどのように変化をもたらすのか。通信事業者とゲームアプリメーカー双方への取材から見えてきた、5G時代のスマホゲームの姿とは?

老舗ゲームメーカーが新鋭のゲームアプリ企業と手を組む時代に

 平成も残りわずかなところ、ゲーム市場をリードしているのは紛れもなくスマートフォンだ。ファミ通の調査によれば、17年にスマホゲームで遊ぶ国内ユーザー数は3610万人にのぼり、市場規模は年間で1兆円を超えた。現在も右方上がりを続けている。

 プレイステーション 4やNintendo Switchなどの家庭用ゲームで遊ぶ国内ユーザー数が2379万人、PCゲームの国内ユーザー数は1483万人(いずれも17年)であることを踏まえると、ほぼ生活必需品として1人1台以上の普及率を誇るスマートフォンやタブレットが最大級のゲームプラットフォームであることは間違いない。かつて家庭用ゲーム機を主戦場としていたメーカーもスマホゲームにかじを切り始めた。

 任天堂はディー・エヌ・エー(DeNA)と15年に資本業務提携し、スマホゲーム事業に本格進出。「スーパーマリオ」「どうぶつの森」など、人気タイトルのゲームアプリを展開して話題を集めた。18年4月にはサイバーエージェントグループ傘下のCygamesとも提携し、スマホ向けオリジナルタイトルを公開した。

 ソニーはスマホゲームによる収益が好調だ。17年度決算発表会では、子会社アニプレックスの人気スマホゲーム「Fate/Grand Order」(FGO)を事業の好調要因として名指しするなど、ソニーの中でもスマホゲームの存在感は確実に増している。

5Gでスマホゲームは変わるか、通信事業者はこう考える

 ゲームジャンルの流行もスマートフォンの進化によって左右されるはずだ。20年頃に国内で始まる5Gも、スマホゲームの姿を大きく変える要因になるのではないか。

 NTTドコモの森永宏二さん(コンシューマビジネス推進部 デジタルコンテンツサービス ゲームビジネス担当課長)は、5Gの高速・大容量、低遅延がポイントになると説明する。

photo NTTドコモの森永宏二さん(コンシューマビジネス推進部 デジタルコンテンツサービス ゲームビジネス担当課長)

 「サーバ側でゲームの演算処理を行い、ユーザー側の端末で映像を描画する(モバイル向けの)『クラウドゲーム』が、5Gの普及によって登場するでしょう。(現在主流の)ゲームアプリはデータサイズが大きく、アプリのアップデートなどで大容量データのダウンロードが都度発生します。これらをサーバ側で処理して負担を軽減できれば、(ゲームのプレイヤーにとって)分かりやすい変化となります」(森永さん)

 通信事業者の立場からゲームメーカーへの期待もある。自宅や移動中のスキマ時間に画面の中で遊ぶものだったスマホゲームが、AR(拡張現実)によって街と連動する──そんな仕組みが大ヒットを生んだ「Pokemon GO」の登場は、ゲームビジネスを推進する森永さんにとっても革新的だったという。

 「(5Gによって)これまでにない感覚のゲームが登場してほしいと思っています。今までのゲームはプレイヤーキャラクターを操作する感覚がありましたが、ARやVR(仮想現実)となると、自分自身がゲームの中に飛び込むような没入感が生まれます。特にOculus GoやOculus QuestのようなスタンドアロンのVR機器と5Gが連動すれば、表現の幅は広がるでしょう」(森永さん)

 NTTドコモは17年12月、実証実験中の5Gを使ってアニメ「ソードアート・オンライン」の世界を再現したVR(仮想現実)ゲームを公開した。これも最新技術でゲームの中に没入するような感覚を一般に向けて表現できればと企画したものだった。

photo

 森永さんは、ゲームの進化は5Gだけでなく、ハードウェアとソフトウェアなどが組み合わさって実現するものと強調。ゲーム開発者やメーカーと「何ができるか」をコミュニケーションしていきたいとしている。

「オンラインゲームの仕組み、20年近く変わっていない」

 一方、スマホゲームを開発するメーカーは5Gの登場をどのように捉えているのか。FGOの開発などを手掛けるディライトワークス(東京都目黒区)の對馬正さん(研究開発部 ジェネラルマネージャー)は、現行のモバイル通信方式「4G」に対して、次のような制約を感じていると説明する。

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