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ガンダム、パトレイバー、コードギアス――リアルロボットの“認証技術”を考察する架空世界で「認証」を知る(2/2 ページ)

» 2019年01月21日 07時00分 公開
[朽木海ITmedia]
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光ディスクによる所有物認証のあるパトレイバー

 では、次の例を見ていこう。題材は以前も紹介した「機動警察パトレイバー」だ。主要スタッフは以前紹介した通り「ヘッドギア」だが、テレビアニメ版の制作はサンライズが担当している。

 より現代的な、警察による運用機材なのだから認証がないと非常に困ったことになるが、どうだろうか。

 主役となるレイバー、篠原重工98式AV「イングラム」を考察すると、いくつかの認証機構があるように見受けられる。まず、レイバーシステム全般に言えることなのだが、OSの入った起動用の光ディスクがないと起動しないようになっている。これは当然「所有物認証」と言えるだろう。

 また、この光ディスクには操縦者の操縦の「くせ」などを記録した学習データが記録されており、これがないと性能を発揮できない。実際、この光ディスクに記録された学習データを狙った犯罪というのも作品中に登場している。

 さらに、明確な描写はないが、おそらくパスワードによる「知識認証」も存在するだろう。以前取り上げたHOSにマスターパスワードがかかっていた描写からも推測できる。「所有物認証」と「知識認証」による2要素認証、これが成立していれば警察の使用機材としてはまずまず合格点をあげられるのではないだろうか。

 では、ライバルのレイバーについてはどうか。「黒いレイバー」こと、シャフトエンタープライズTYPE-J9「グリフォン」は、一般的なレイバーと異なり、「ASURA」と呼ばれる独自のOSで動いている。また、その性能は当時の最新鋭機「イングラム」をも圧倒するほどだ。

 さて、その「グリフォン」の認証システムだが、どうやら操縦者であるバドリナート・ハルチャンドの虹彩を読み取っている描写がある。おそらく「生体認証」が用いられていると推測される。この辺りもワンオフのレイバー、ワンオフのOSを持った機体らしいところである。

ロボット

「コードギアス」のナイトメアフレームも2要素認証

 もう少し新しい作品も見てみよう。「コードギアス 反逆のルルーシュ」だ。

 まずは基本データから。谷口悟朗監督とCLAMPのキャラクター原案で話題となったダークSF。

 超大国「ブリタニア」に占領されたかつての日本、「エリア11」で暮らしてきた少年ルルーシュ・ランペルージがとある事件に巻き込まれ、「ギアス」という他人を従える王の力を持つことでブリタニア帝国に対して戦いを挑むというストーリーだ。

 本作品に登場するロボットは「ナイトメアフレーム」と呼ばれる。ブリタニア軍が日本侵攻の際に使用したのが最初で、リアルロボットとしては小型の4〜6メートル程度のサイズとなっている(※2)。パトレイバーの98式AV「イングラム」が全長約8メートルなので、より小ぶりであることが分かるはずだ。

 さて、認証機構はどうなっているだろうか。第2話でルルーシュがギアスの力を使い、ナイトメアフレームを奪取するところでその仕組みが判明する。ギアスの力で自動車の鍵のような「所有物認証」を奪い、さらに「ナンバー」と呼ばれるパスワード、すなわち「知識認証」を聞き出しているのだ。通常ならば2要素認証がそろっていれば十分なセキュリティと言えるが、さすがに超常能力「ギアス」の存在までは考慮できなかったようだ。

※2:ナイトメアフレームは設定上4メートル程度のサイズなのだが、これだと人間が搭乗することができないため、作画上は6メートル程度のサイズで描かれたという事情があるようだ。

 ちなみに本作品には他に「ナイトギガフォートレス」という非人型機動兵器も登場するが、これはパイロットと神経電位接続を行っているため、おそらく生体認証と推測される。この辺りも注目のポイントだ。

ロボット

時代に合わせて認証もリアリティーが増している

 以上、サンライズの代表的な3作品について見てきた。

 さすがにファーストガンダムは古すぎたのか、認証の概念が描かれていなかったが、その後の作品では認証について描かれていたことがわかるだろう。

 今回は触れられなかったが、「装甲騎兵ボトムズ」や「蒼き流星SPTレイズナー」「ガサラキ」といった高橋良輔監督作品も独特のリアリティを持っているので、興味を持った諸君は認証ネタを探して見てみるのも良いかもしれない。

 さて、次回はちょっと趣向を変えて「架空世界に登場する電子マネー」について取り上げたいと思う。

 現代の日本でも徐々に使われるようになった電子マネーだが、架空世界ではどのような描かれ方をしているだろうか……? お楽しみに。

 それでは本日はここまで!

著者プロフィール

朽木 海 (ライター、編集者、γ-Reverse代表)

ゲーム会社や出版社などの「IPが欲しい会社」と、ライトノベル作家や脚本家、漫画家などの「IPを作りたいフリーランス」を繋げるためのプロジェクト「γ-Reverse」の代表。引き続きライター業や編集者業も行っています。

せぐなべ」にて「オンラインゲームセキュリティガイド〜正体バレても大丈夫?ネットの向こうにご用心〜」を執筆。

「せぐなべ」紹介

ITを活用する上で無視できない認証とセキュリティの話題を、楽しく分かりやすく伝える認証セキュリティの情報サイト「せぐなべ」。運営企業のパスロジは、企業向け認証プラットフォーム「PassLogic」や個人向けパスワード管理アプリ「PassClip」などを提供。ITmedia NEWSで認証関連の話題を分かりやすく解説する「今さら聞けない「認証」のハナシ」を連載中。

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