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木材の「ほぞ組み継手」を自動設計 東大「Tsugite」開発Innovative Tech

» 2021年04月08日 08時15分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学の研究チームが開発した「Tsugite」は、木材を使った作品で、くぎやビスを使わずに木材を組み合わせられる「ほぞ組み継手」を設計し、CNC切削機で加工できるようにするシステムだ。接合部の形状をコンピュータで設計して切削データを作成、出力された切削データ通りに木材を加工するだけでいい。

photo 釘やビス、接着剤を使用せず、数本の木材を接合できるよう設計する

 木材を接続する方法の中でも、釘やビスなどの材料を使わずにつなぐ伝統的な接合方法「ほぞ組み」は見た目も美しく強固な作りに仕上がるが、設計が難しく、間違えるとズレが生じ安定性も下がる。接合部分は「継手」と呼ばれ、美しさと機能性のバランスを考慮した複雑な設計をしなければいけない。

photo さまざまな形状の接合部

 今回の手法は、そんな複雑なほぞ組み継手の形状を設計し、木工用CNC切削機(フライス加工)を動かす切削データとして書き出すもの。

 木材の寸法入力から始まり、つなぐ角度や本数を設定、ボクセル操作の要領で継手の形状をデザインしていく。一方の木材をデザインすると対になる木材の設計も出来上がる。1つの接合部に対して、3本4本と増やしてもエラーが出るまで自動設計され、途中にエラーが出ても問題箇所を教えてくれる。

 鋭角に切削できない内角部分も、使うツールの径に合わせて互いに形状補正されるので、切削後の加工をほとんど必要としない。

photo システムの概要図

 インタフェースは、ユーザーが押し引きして直接操作する手動編集モードと、継ぎ手を選択し自動操縦するギャラリーモードの2つを用意。後者を活用すると専門知識がなくても質の高い継手を作成できるという。

 試作した屋台を見ると、接合部が美しくしっかり固定されているのが確認できる。

photo 27本の木材で作成した屋台
photo 3方向からの継手もきれいに仕上がる
photo 12本の木材で作成した椅子
photo 10本の木材で作成したテーブル

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