電力を安定供給できるバイオマス発電、燃料の確保は地域ぐるみで再生可能エネルギーの拡大策(5)(1/2 ページ)

全国各地でバイオマス発電の導入量が増えている。特に未利用の森林資源を生かせる木質バイオマス発電が活発だ。限りある地域の資源を長期的に調達できる体制の構築が急がれる。林業と連携した燃料供給システムの確立や、熱を含めたエネルギー利用の高効率化も求められる。

» 2016年06月24日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第4回:「大規模な地熱発電所を増やす、開発リスクを低減する掘削技術も」

 再生可能エネルギーの中で最も安定した電力を供給できるのがバイオマスである。全国どこでも発電用の燃料を入手できるうえに、年間を通して発電量が変動しない。2012年度に固定価格買取制度(FIT:Feed-In Tariff)が始まったことで、バイオマス発電所の建設プロジェクトが各地に広がった。

 今後さらに普及させるためには課題も多い。燃料が豊富にあるとはいえ、長期にわたって安定した量を確保できる体制を構築しないと、発電事業が立ち行かなくなるおそれがある。2017年度に改正するFIT法では発電設備の認定制度を強化して、バイオマス発電設備には燃料の調達先や調達量の申告が必要になった(図1)。

図1 バイオマス発電に関するFIT(固定価格買取制度)法改正と拡大策。出典:資源エネルギー庁

 新しい認定制度では審査の段階で、使用する燃料の詳細な情報を提示しなくてはならない。ほかのバイオマス発電所でも同じルートで燃料を調達する場合には、両方の認定審査で調達状況を確認する。さらに認定を取得するにあたって燃料の利用計画を提出する必要があり、運転を開始した後も使用量の実績値を報告することが義務づけられる(図2)。

図2 新しい認定制度によるバイオマス発電の燃料需給管理プロセス。出典:資源エネルギー庁

 こうした厳格な需給管理を実施すれば、バイオマス発電に利用する燃料の調達状況を政府や自治体でも確認できる。と同時に貴重な資源の乱用を防いで、林業をはじめ既存の産業に悪影響を及ぼさないように国全体で調整することも可能になる。

 すでに運転を開始したバイオマス発電所の中には、地域ぐるみで燃料の安定供給体制を構築する事例が増えてきた。代表的な例は茨城県の常陸太田市で2015年11月に稼働した「宮の郷木質バイオマス発電所」である。発電能力が5750kW(キロワット)の大規模な木質バイオマス発電所では地域の間伐材などを年間に6万3000トンも利用する(図3)。

図3 燃料の安定供給体制の構築例(上)、「宮の郷木質バイオマス発電所」の全景(下)。出典:資源エネルギー庁、日立造船

 これだけ大量の燃料を長期間にわたって確保するために、地元の林業事業者が共同で原木の供給体制を作り、発電事業者の日立造船と共同でチップの製造工場を発電所の隣接地に建設した。茨城県と常陸太田市も補助金を交付してチップ製造工場の建設・運営を支援している。

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