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Survey:コラム 2003/11/13 00:00:00 更新

「通信と放送の“非”融合〜何が両者の間を隔てているのか?〜」
第3回:ケータイから見た“非”融合(下)

「ケータイから見た“非”融合」最終回となる今回は、具体的なサービス・イメージと生活者の需要性を考えながら、「融合」の可能性を探ってみたい。

融合型サービスの生活者需要性

 今回が「ケータイから見た“非”融合」最終回となるが、今回は具体的なサービス・イメージと生活者の需要性を考えながら、「融合」の可能性を探ってみたい。

 地上波放送のデジタル化のメリットは、携帯電話等のモバイル端末で鮮明な映像でテレビ受信できることに留まらず、通信と連動させた様々なサービスが受けられる点にもある。

 テレビ付き携帯電話サービスの開始自体が現在模索中であるから、そこでの通信・放送融合型サービスについても、当然ながらいまだ詳細は確定していない。しかしながら、将来的に可能性のあるサービスとしては、次のようなものが想定されている。

  1. EPG(電子番組ガイド)の提供
  2. 番組関連情報の提供(番組内容、出演者など)、あるいは関連情報サイトへのリンク
  3. メール等を利用したプッシュ型の番組告知サービス
  4. 番組に関連したコンテンツ(主題歌など)のダウンロードサービス
  5. 番組・CMと連動した通信型広告サービス(店舗情報、オンライン・クーポン配信など)
  6. 番組・CMと連動した物販サービス

 上記のサービスを収入源から区分すると、1〜3がパケット通信料、4がコンテンツへの有料課金、5が広告費、6が物販となり、大きく4つに分類できる。

 では、どのサービスがユーザーから受容され、放送局やキャリアーの収益の柱となっていくのだろうか?

 まず、1〜3のようなパケット通信に依存するサービスについては、一定の需要は見込めるには違いないが、それがどのくらい収益に貢献するかについては議論の分かれるところである。

 現在、ユーザーの通信時間は頭打ちの状態にあり、パケット通信料による収益は飽和に達しつつある(下図)。

1加入あたりの通信時間

 また、パケット通信が増えれば通信キャリアーの収益は増えるが、放送局の収入が増えるわけではないから、同サービスに対する放送局側の「やる気」が生まれにくいという難点もある。

 そうした中、特に将来性が期待できそうなのが「モバイル・サービス」の分野である。ここでいうモバイル・サービスとは、着メロや待ち受け画面などのコンテンツを有料で提供するコンテンツサービス、サイト上で物販や取引を行うモバイル・コマース、サイト上で広告を展開するモバイル広告を指す。

 モバイル・サービス市場は、iモードがはじまった1998年以来急速な拡大を遂げており、2002年の市場は3,630億円にまで成長している(下図)。

モバイルサービス市場規模

 テレビ付き携帯電話の通信・放送連動サービスでも、今後、モバイル・サービス市場が急速に立ちあがっていくことが予想される。上記のサービス・ラインナップでいうと4〜6がモバイル・サービスにあたるが、これら3つに留まらず、今後様々なものが生まれてくるであろう。

 現在「着うた」サービスがブレイクしており、対応端末を持つユーザー約6割近くがこの「着うた」サービスを利用しているという(記事参照)。こうした既存のコンテンツ・サービスとテレビ放送を連動させて、サービスの更なる利用促進をはかることもできるのではないだろうか。

 例えば、番組の主題歌、音楽番組で演奏される音楽、CM挿入歌など、テレビ番組を引きとして着メロ、着うたのダウンロードを促進することもできるだろう。こうした番組連動型のダウンロード・サービスは、音楽に限らず、映像、画像、テキストなど、様々なものが想定できよう。

 モバイル広告やモバイル・コマースについても同様で、テレビという強力なメディアの力を借りて、いかに顧客を通信サービスへと誘導していくか、という発想が重要になる。

 テレビは、現在において最大かつ最強のメディアである。テレビ画面をポータルとして顧客をさまざまな通信サービスへと取り込んでいくことで、新しい市場を創造することができるのではないだろうか。

解決すべき課題

 しかしながら、連動サービスを離陸させる上で、解決しなければならない課題もいくつか残されている。

1:放送を阻害しない通信サービスの実現

テレビ放送は一方向の不可逆的なサービスである一方、通信は双方向で、ユーザーが自由に行きつ戻りつしながら情報を調べることができる可逆的サービスである。重要なのはユーザーがテレビを見るモードと情報を調べるモードでは「時間感覚」に違いがあるという点である。テレビから受動的に情報を受け取っているユーザーを、通信で調べものをするモードに切り替えさせるのは容易ではない。放送の流れを妨げることなく、ユーザーに通信サービスを利用させる仕組みをどう作っていくかが大きな課題となる。

2:コンテンツの利用環境の整備(著作権管理、取引・契約システムの整備)

放送事業者側は、不正利用を恐れて通信でコンテンツを流すことに及び腰になりがちである。しかし、デジタル・メディアにおいては、コンテンツの流通性を高めることがサービス価値の向上につながる。著作権の管理体制を整備すると同時に、コンテンツの流通性を高めるような事業者間の取引・契約システムを構築することが重要である。

3:役割分担と利益配分の取り決め

通信事業者と放送事業者が“Win-Winの関係”を構築することによって、ユーザーに最適のサービスを提供することができる。そのためには、お互いの役割分担を明確にしつつ、利益をどのように配分するかを事前に明確に定めておく必要がある。

 上記のブレイクスルーは、技術革新よりは、既存サービスの有効な組み合わせ、当該事業者間の合意形成の努力によって生まれるものであろう。

「ユビキタス社会」と「融合」

 最後に、サイバードIMAGICAが開発した「ワンプッシュ」という技術を紹介しておきたい。

 この「ワンプッシュ」は携帯電話の赤外線通信技術を利用した技術で、携帯電話端末をテレビのリモコンとして利用しながら、デジタル放送の番組やCMで欲しい情報がある時に携帯電話のボタンを押すと、メールでモバイル・サイトのアドレスが送られてくるという仕組みである。ユーザーはそのアドレスにアクセスすることで、番組やCM出てきた商品やサービスの詳しい情報が入手できる。

 これが文字通りの「融合」と言えるかどうはともかく、通信と放送のそれぞれの強さを活かした連動サービスであることには違いなく、通信と放送の連携のひとつの将来像を提示しているように思える。

 この例に示されるように、通信と放送の両者を単一の端末の中で完結させる必要はない。要は、モバイル、家庭用テレビ、PCなど、あらゆる端末が縦横無尽に繋がって、それぞれの強みを生かしながら、ユーザーに最適の情報が提供できればよいのである。

 

 現在「ユビキタス社会の到来」がいわれているが、端末や伝送路に依存しないシームレスな(継ぎ目がない)情報環境が整備されてこそ、真のユビキタス社会だといえる。そうした中、利用者が「通信」と「放送」の区分けを意識する必要性のない情報空間が生まれることによって、真の「融合」が達せられるのではないだろうか。

 次回から、執筆者を井上忠靖副主任研究員にバトンタッチして、「ブロードバンドTV放送」に関する連載が始まります。

 乞うご期待!

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関連リンク
▼OPINION:電通総研

[西山守,電通総研]

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