コラム
» 2004年09月07日 00時00分 UPDATE

ITソリューションフロンティア:トピックス新しい情報発信手段「まぐまぐ文庫」

書店店頭で1冊ずつ一般の人の原稿をオンデマンド印刷・製本し、販売まで行うインターネット時代の新しい情報発信サービス「まぐまぐ文庫」が、まぐまぐ、野村総合研究所、コニカミノルタの3社により2004年4月より開始された。本稿では、このようなサービスが求められる背景に触れながら、「まぐまぐ文庫」の概要を紹介する。

[佐々木崇,野村総合研究所]

増える自費出版

 本が売れない。書籍の総販売部数は毎年減っており、出版不況と言われる。それでも新刊の点数は年々増加しており、現在、年間約7万点もの本が店頭に並ぶ。一方、通常の書店に並ばない自費出版の点数は年間3 〜 5 万点と言われ、一般の新刊書籍の半数に迫る勢いである。自費出版は、リタイアしたシニア世代が自分史などを記録に残しておきたいというものが代表的だが、最近では小説や歌集などの自己表現や、企業の広告手段としての自費出版も増えてきている。

 しかし、自費出版の壁は厚い。たとえば四六判(約19cm×13cm)200ページの本を500 部、大手出版社から自費出版しようとすると、最低でも150万円程度の費用がかかる。これは、印刷・製本に加え、レイアウト、組版、校正・校閲をしたり、流通を仲介したりすることに費用がかかるためである。さらに、当然ながら内容によっては出版社から断られることもあり、気軽に出版というわけにはいかない状況にある。

見直される紙媒体

 一方、いま最も気軽に情報発信できる媒体としてインターネットが普及している。ホームページやメールマガジンを通じて小説などを発表する例も見受けられる。企業などが宣伝広告の媒体としてメールマガジンを活用する事例も多い。メールマガジンの発行を業務とする“まぐまぐ”では、発行誌数が約29,000あり、配信メール数は年間で20億通を超えている。

 自費出版が増えている背景には、このようにインターネットを通じて気軽に情報発信できるようになったことがあるのではないだろうか。すなわち、手軽な自己表現の手段を手にした発信者が、今度はその表現を形として残しておきたいと考えるようになったと言えないだろうか。とくに自己実現手段のひとつと考えられる自費出版の場合、きれいな装丁を施した「形」として残したいというニーズが大きい。

 また、最近のフリーペーパーなどに見られるように、広告媒体として紙媒体が見直されている。電子メールやバナー広告の限界を感じはじめている企業も多い。活字の宣伝効果が高いことから、広報誌は言うまでもなく、社員やライターに執筆させた本を出版するという事例も多い。

手軽な紙媒体での情報発信「まぐまぐ文庫」

 通常の書籍は、事前に決めた部数を印刷・製本し、これを各書店に配本する形となっている。大量の部数であれば1 冊あたりの印刷コストは安いが、出版社にとって返本・在庫リスクがある。そこで、1 冊から印刷・製本できるようなオンデマンド出版という仕組みが考え出された。しかしオンデマンド出版でも、上製本の場合には1 冊あたり1〜2万円近くかかってしまう上、印刷所での印刷・製本となるので時間がかかるのが実情である。「まぐまぐ文庫」は、このオンデマンド出版を書店店頭で実現し、より手軽に自費出版など紙媒体での情報発信ができるようにしたサービスである(図1参照)。

図

 現在、約20店舗の店頭に専用の印刷・製本機を設置し、インターネット経由で配信する原稿データをその場で印刷・製本して販売する。80ページ程度の書籍であれば、約40秒で完成する。また完成した書籍の通信販売がインターネットでも可能である。

 「まぐまぐ文庫」で出版する場合の費用は、6 カ月分の書店およびインターネットでの販売権料、完成書籍100冊分の料金として約10 万円である。本が1 冊売れるごとに、販売単価の50%から120円を引いた金額が発信者の売上になる。

「まぐまぐ文庫」の可能性

 「まぐまぐ文庫」では、物流にかかる時間や費用が不要なことから、新鮮なコンテンツをいち早く、かつ安価に読者に提供することができる。これは、インターネットと書籍出版の両方のメリットをあわせもつ新しい媒体とも言え、企業の広告宣伝、パンフレットやマニュアル類の配信や、自費出版などに幅広く活用されていくと思われる。

 今後さらに、レコード店など新たな販売店舗の開拓を図り、コンテンツの拡充などサービス機能を高め、より多くの人に気軽に利用されるよう拡大していく予定である。新たな情報発信のインフラのひとつとして、今後の動向が注目される。

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