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個品識別技術を用いた商品トレーサビリティ(前編)ITソリューションフロンティア:トピックス

» 2004年10月01日 00時00分 公開
[高尾将嘉,野村総合研究所]

個品管理による一貫した商品管理の実現

 ある商品の製造・販売から消費・廃棄に至る商品のライフサイクルにおいては、次のようなさまざまな情報が発生している。

(1)原産地、原材料、部品など生産や加工に関する情報

(2)仕入れ先や販売先、販売金額など流通に関する情報

(3)入出庫や運送状況など物流に関する情報

 商品トレーサビリティとは、これらの情報を履歴として蓄積・管理し、追跡可能にすることであり、これによって商品の安全性を保証し、サービスの向上やユーザーの利便性の向上を図ることが可能になる。

 商品トレーサビリティを実現するために必要な技術は、大きく分けて2 つのものがある。ひとつは、ICタグや2 次元バーコードのように商品を個品で識別・管理する技術であり、もうひとつは、その個品がどのように製造、保管、運送、販売、使用・消費されたかの履歴情報を管理する技術である(図1参照)。

図1

 個品管理とは、商品をメーカー名と商品コードだけでなく、個品番号(シリアルナンバー)で管理することである。ICタグや2次元バーコードのような自動認識技術を用いれば、企業コード、商品コード、シリアルナンバーを企業間で共有することが可能になる。個品管理に用いるこれらのコード体系は標準化されていることが必要で、経済産業省は小売業で広く使用されているJANコード(EAN/UCCコード)や、製造業で使われているCIIコードなど、既存のコード体系を包含するメタコードとなるコード体系を国際標準提案している(図2参照)。履歴情報管理については以下で解説する。

図2

履歴管理を実現するための仕組み

 ICタグやICタグに記録される商品コードの標準化を進める一方で、業務として検討する必要があるのは、どこでどのような情報を履歴として取得しておく必要があるかというトレーサビリティの情報管理のあり方である。

 たとえば書籍の流通を想定すると、(1)出版社からの出荷、(2)取次への入荷、(3)取次からの出荷、(4)書店への入荷、(5)書店での販売といった商品の動きが考えられる。この動きの情報を追跡可能にすることによって商品トレーサビリティが実現する。すなわち、出荷、入荷、販売という行為は、トレーサビリティに必要な情報を発生させる要因(イベント)である(図3参照)。これらのイベントが起きた時点での点としての情報を、ここではトラッキングデータと呼ぶ。商品のライフサイクルにおいて発生した複数のトラッキングデータが時間軸に沿って揃っていれば、たとえば商品の原材料を調べたり、発送状況を調べたりといった商品トレーサビリティが実現する。

図1 (クリックで拡大表示)

 複数のトラッキングデータを1 つのデータセットとしてまとめ、後からトレース可能にしたものをここではトレースデータと呼ぶ。すなわち、トラッキングデータは点の情報であり、トレースデータは線の情報であると考えられる。

(後編は10月5日掲載)

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