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特許動向調査を円滑化する「経過情報フロー表示」ITソリューションフロンティア:ソリューション

» 2004年10月08日 00時00分 公開
[加藤玲雄,野村総合研究所]

高まる審査経過情報調査の必要性

 日本ではいま、2002年の「知的財産基本法」制定に象徴されるように、企業ばかりでなく国をあげて「知的財産立国」を目標とするプロパテント政策が推し進められている。このような時代の趨勢のもとで、企業は特許戦略に大きな力を注いでおり、その特許戦略の推進において、競合を含めた他企業の特許出願や審査の状況など、特許動向の調査が不可欠になっている。それは、この調査によって、他社の特許を侵害することで巨額の賠償金を支払うというような事態を未然に防ぐことができ、また、他社と同様の開発を避けることが、独自の強力な特許を創出することにもつながるからである。

 しかし、特許動向の調査といっても、単に公報として公開される特許出願や特許権の内容だけを調査・監視していればよいというものではない。特許出願状況や特許権の法的ステータスは刻々と変わるものだからである。この法的ステータスの変遷は、一般に特許の「審査経過情報」と呼ばれる。企業はこの審査経過情報に基づいて特許動向を正確に把握し、適切に対応することが求められているのである。

難解な審査経過情報

 従来より、企業などの知的財産担当者は、文字情報として提供される特許の審査経過情報を基に、この動向調査を行ってきた。近年は特許出願件数の増加や権利付与対象の広範化により、知的財産管理担当者は、大量の特許データを素早く読み解くことを強く求められてきている。しかし、従来の審査経過情報は往々にして難解で、調査の高速化が思うようにできないのが現状であり、結果として、知的財産担当者の負担はますます大きくなっている。

 一方、企業全体の調査効率を高めるために、新技術の研究・開発者が、その研究・開発の段階で特許の動向調査を自ら分担する事例も増えてきた。しかし、特許制度にそれほど詳しくない研究・開発者にとって、難解な審査経過情報を理解するのは困難な場合が多く、結局は知的財産担当者の負担を増大させ、さらには本業の研究・開発に支障をきたしたりすることも起こり得る。

 このようなことから、審査経過情報を理解しやすく整理された形で提供することがニーズとして大きくなってきている。

経過情報フロー表示による調査の効率化

 NRIサイバーパテントではこの解決策として、特許の審査経過情報をフローチャートの形式で図示する機能を開発し、NRIサイバーパテントデスク内でサービスを提供している。

 この機能は経過情報フロー表示機能と呼ばれ、特許が出願されてから審査・審判・登録を経て消滅に至るまでのプロセスが、1枚のフローチャートにより表現される(図1参照)。フローチャートでは、すでに手続きが行われたプロセスと、それらを結ぶ経路が着色された状態で表示される。オンデマンドで描画する技術を用いることにより、過去40年分を超える範囲のなかから任意に選択した出願のそれぞれについて、出願時の法律と審査経過情報を反映したフローチャートを表示することが可能となっている。これにより、出願された特許がどのような経過をたどり、現在どのような状態にあるかということだけでなく、今後予定されている手続が何かについても一目で把握することができる。

図 経過情報フロー表示の画面例

 また、より詳細な審査経過情報を得ることも容易である。フローチャートで審査経過情報の概要を確認した後、1回のクリックで、審査などの各プロセスにおける詳細な情報を表示させることができる。

 加えて、この機能はインターネット上で提供されるので、NRIサイバーパテントデスク内で同様に提供される他のサービスとの連携も容易である。調査する特許出願自体の、あるいは関連する特許の公開公報などを、フローチャート画面からのリンクにより容易に参照できることはもちろん、類似特許を検索したり、各種の検索結果からフローチャートを表示したりすることも可能である。

 このような機能によって、知的財産管理担当者ばかりでなく研究・開発者にとっても、審査経過情報を直感的に理解しやすくなり、調査時間を大幅に短縮できるようになる。特許動向調査の効率化が必要不可欠となってきているいま、経過情報フロー表示機能は、知的財産管理担当者と研究・開発者の双方にとって強力なツールとなるに違いない。

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