新連載:クリエイティブにAIを込めて
“AIのうそ”すら創作のヒントに──生成AIは創作活動を支援するか? 博報堂の生成AIに対する考え方(3/3 ページ)
デザイナーが、AIのハルシネーションを新たな表現の素材として評価することで、独自の表現を着想することもありえるでしょう。マーケターが、AIが生成した奇妙な形状や色彩から着想を得て、従来の商習慣を裏切った企画を生み出すこともあるかもしれません。
AIが人のクリエイティビティを刺激するだけでなく、その逆もあります。私たちがAIのクリエイティビティを高めていく、ということです。
例えば生成AIにアイデアを100個出させ、それらを全て「ボツである」と生成AIに返します。そして「なぜボツになったかを考え、次はボツにならないアイデアを出すように」とAIに指示すると、最初の100個のアイデアからひねった、質の良いアイデアが出てくる。そういうような指示を与え、生成AIの能力をさらに引き出していくこともできます。
その進化したアイデアで、また私たちの創造性もインスパイアされる。人とAIの相互作用による創造性の共進化ともいえるような現象です。ここにおいてAIは、もはや単なるのツールの枠におさまらず、人と共創するパートナーになります。
人は「問い」も「答え」もない領域で創造性を発揮する
私たちがAIを始めとするテクノロジーの開発に注力するのは、その結果としてもたらされる人間の創造力の進化と、テクノロジーとの協働、シナジーを期待するからです。これまでも、メディアや生活者など多種多様なデータをデータ基盤内で統合し、広告主の広告効果を最適化して、事業成長に貢献する次世代型モデル「AaaS」(Advertising as a Service)の開発など、多様なプロジェクトを手掛けてきました。
進化したAIがマーケティングやクリエイティブのプロセスを変えていくとすれば、同時に人間のマーケティングやクリエイティブの能力にも変化があるはずです。それによりさらにAIの潜在能力も高まるでしょう。AIの活用には、そのような在り方があると思っています。
人の表現活動や創作活動にまでAIを用いることで、人間の創造性が失われてしまうのではないか、失われるまではないとしても衰えてしまうのでは、という危惧もあるかもしれません。それに対しては「人の創造性の真価とは何か」を考えることが大切です。
人の創造力が本当に発揮されるのは、いまだ「問い」も「答え」もない領域においてです。既に「問い」があり、それに対する「答え」がある領域では、早晩AIが人間に代わって答えを出すようになるでしょう。生成AIでは難しいものでも、現在注目を集め始めている、米OpenAIの最新AIモデル「o1」のような“深く考えるAI”によって答えを得ることができるかもしれません。
しかしビジネスや社会には、これまでなかった問いが必要になる場合があります。環境や人口、食料、健康、貧困、孤独など、複雑な社会課題が入り組んでいる現代において、どのようなビジネスを行うか、どのような取り組みを行うか。それらを考えるには、解くべき問いをどう立てるかが重要になります。
それは過去には存在しなかった問いであるため、データの蓄積もなく、誰も答えを知りません。解くべき問いを見いだし、それに対する答えを見つけんとする営みの中にこそ、人の創造性はあると考えます。そのような創造性は決してAIによって代替されることはないでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
クリエイティブにAIを込めて
AIによって人間の能力を向上させていくことを目的とする研究機関「Human-Centered AI Institute」を設立した博報堂DYホールディングスが、生成AIとクリエイティビティについて考える。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
2
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
3
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
4
ChatGPTにAIでバーチャル試着機能とカメラでの書類スキャン→PDF化機能
-
5
SIE、PS5向けAI採用画質向上技術「QSSR」発表 AMDと共同開発、「Marvel's Wolverine」と「Ghost of Yōtei」が初対応
-
6
Google、「Gemini 4 Pro」ではなく「Gemini 4 Argon」発表 まずはサイバー防御組織に限定提供、出力上限は100万トークンに
-
7
人間は「取締役2人だけ」 実務をAIが担う新会社、セキュリティサービスのHENNGE
-
8
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
9
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
10
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR