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AIスタートアップ・オルツの不正疑惑 予兆の「フラグ」はあったのか? “数字”から検証(2/4 ページ)
プレスリリースでも利用契約数が定期的に発表されており、25年3月31日時点で9000社を突破しました。24年7月に8000社を突破したとしており、半年で1000社以上の新規導入を達成したことになります。
しかし、議事録ソフトが半年で大量に売れるでしょうか。議事録ソフトは会議や打ち合わせを文字起こしや、要約などを行うものです。同業他社からも提供されており、無料で使えるソフトもあります。さらに、オンライン会議で利用されるMicrosoft TeamsやGoogle Meetでも同等の機能が追加されました。無料や標準機能で使えるものを、これほど多数の会社が短期間で購入したのでしょうか。
実際にオルツは「AI GIJIROKU」の販売をパートナーに委託しており、今回は販売パートナーによる不正が疑われています。主要な販売代理店は3社ありますが、売上高60億円のうち32億8300万円(54.2%)を1社に依存しています。
主要販売パートナーのジークス(東京都渋谷区)ですが、自社Webサイトから実績を調べると広告キャンペーンやイベントを行う会社でした。さらに社員数は27人です(25年5月2日時点)。もう1社の販売パートナーであるINFホールディングス(京都市)によるAI GIJIROKUの売上は6億1700万円(10.2%)です。こちらはSalesforceなどのSaaS販売が主業務ですが、AI GIJIROKUについて記載はありません。
また、オルツは販売パートナーとして大塚商会と提携しており、同社には営業職が3180人います。しかし、大塚商会からの売上は決算資料に掲載されるほどの金額ではありません。広告会社が32億8300万円分の議事録ソフトを販売する一方、IT製品を含めた営業が強い大塚商会で特筆するほどの売上がないのは違和感があります。
売上60億円に対して広告費は45億8000万円
販売パートナー以外にも気になる点があります。売上60億円に対して、広告費は45億8000万円もあるのです。
スタートアップが顧客を増やすために宣伝を行うのはよくあることですが、売上の75%を広告費につぎ込むのは異例です。これだけの費用を投じながら、テレビや新聞、SNS、街頭や交通機関でのAI GIJIROKUの宣伝について、筆者は見かけた記憶がありません。
それ以外の広告費用として考えられるのは、プレスリリースに掲載のある展示会の出展やイベント開催です。主な展示会は「AI・人工知能EXPO」「Japan IT Week」 「EDIX(教育総合展)」「APPS JAPAN(アプリジャパン)」で、これらは東京ビッグサイトや幕張メッセで開催されます。
他の大きなイベントは「オルツカンファレンス」を23年と24年に開催しています。会場はベルサール東京日本橋で1000人規模の開催を想定しており、利用料は標準の料金テーブルによれば平日の12時間で462万円(準備を考慮して24時間の場合は693万円)です。追加費用で成田悠輔氏や竹中平蔵氏など豪華ゲストへの出演料の他、会場運営費用や集客のための広告費の発生も考えられますが、さすがに億単位になるとは考えにくいです。
従業員数は連結で207人、オルツ正社員は23人
続いてオルツの組織体制を調べてみます。従業員数は連結で207人で、内訳は正社員が75人、業務委託が132人です(24年12月31日時点)。業務委託は自社の社員やアルバイトとして雇用するのではなく、外部の個人や企業に業務を依頼する形式です。いわば「外注先」「協力会社」「下請け」となります。実際にオルツ単体の正社員は23人です。
オルツでは人手不足をクラウドソーシングで対処しており「オルツ クラウドワークス」で検索すると、該当するページが表示されます。詳細を確認すると募集履歴が25年5月時点で444件ありました。募集には「AI・チャットbot開発の仕事」「スマートフォン向けアプリ開発」「サイト構築・Web開発」「データベース設計・構築の仕事」などさまざまです。
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