マスクド・アナライズの「AIしてま~す!」
AIスタートアップ・オルツの不正疑惑 予兆の「フラグ」はあったのか? “数字”から検証(3/4 ページ)
さらに「大規模言語モデルを開発するAIエンジニア」「音声認識モデル生成のAIエンジニア」を時給4000~5000円で募集しているのも確認できます。このような組織体制で、大規模言語モデルを含めてデジタルクローンやパーソナルAIなど多数の製品を開発していたことになります。
開発費のコスパ高すぎ!?
オルツの研究開発費は23年が5億9348万7000円、24年が13億6000万4000円でした。この金額で大規模言語モデルを含めて、デジタルクローンやパーソナルAIを含めた多数の研究開発を実現できるでしょうか。
前述の通り、オルツの正社員は23人で、業務委託として外部のエンジニアにもクラウドソーシングで依頼しています。そこで業務委託費を見ると、23年が4億1787万8000円、24年が10億2612万円です。
業務委託においてフルタイム(1日8時間・月20日以上)で稼働する人材は17人にとどまり、半年以上に渡って継続的に稼働する人材は12人です。職種について明らかにされておらず、研究者やエンジニアかは分かりません。
研究開発や大規模言語モデルを含む製品開発に取り組むには、通常は年単位の時間がかかります。さらに大規模言語モデルの開発には、人件費だけでなくGPUの費用も必要です。この人材と投資額で、大規模言語モデルのみならず、パーソナルAIやデジタルクローンを開発できるのでしょうか。
一方でプレスリリースで大規模言語モデルの受託開発を発表しており、費用は約20億円からとしています。受託開発の実績として公表されているものはまだありません。さらに前述で紹介した自社製品においても、導入事例は極端に少ないです。大量のプレスリリースはあるものの、AI GIJIROKU以外の製品における導入事例が紹介されていません。実証実験や効果検証を開始するものの、その後は進展がありませんでした。
数少ない動きがあった事例としては、23年11月に発表された教科書を出版する東京書籍(東京都北区)との協業があります。25年4月に、対話で問題や解説を生成する「教科書AI ワカル」というサービスを発表したものの、展示会における体験版の公開にとどまります。
他の事例はM&A仲介におけるクローンマッチングにおいて3件の成約があったものの、売上全体の12%を占める部門のさらに一部なので業績に与える影響は軽微です。多額の資金と時間を投じて開発した製品の多くは、実証実験やいまだ売上に結び付く気配はありません。
このように資金調達やプレスリリースに対して実績が乏しく、売上につながるのは導入実績として会社のロゴを多数掲載するAI GIJIROKUのみという状況でした。しかし、今回の調査結果によってAI GIJIROKUすら、売れていなかった可能性もでてきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
マスクド・アナライズの「AIしてま~す!」
企業への生成AIの導入活用やDX支援を手掛ける、AIコンサルタントのマスクド・アナライズさんが“生成AIの今”を愛を持って解説していく。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
2
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
3
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
4
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
5
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
6
「Gemini 4 Argon」とは 性能評価にみるAstra/Fable/Opusとの違い 一般提供は年内?
-
7
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
-
8
Rails作者DHH「Pencils Down、もう手でコードは書かない」 それでもソフトウェア開発の未来は明るい理由
-
9
Autodesk、FusionなどのAI機能を発表 設計作業の自動化や設計資産の再利用を支援
-
10
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR