小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
これがWeb 4.0? Microsoftが提唱する「Open Agentic Web」を解説 今までのWebサイトは“司書のいない図書館”(3/4 ページ)
これまでのWebサイトは「司書のいない図書館」
改めて、キーノートスピーチ上でどのような解説が行われていたかを見ておこう。まずスコットCTOは、NLWebを「Agentic WebのためのHTMLのようなものだと考えられる」という、象徴的な言葉で表現。NLWebによって「すでにWebサイトやAPIを持っている人なら誰でも、自分のWebサイトやAPIを非常に簡単にエージェントアプリケーションにできる」としている。
また「全てのNLWebエンドポイントはデフォルトでMCPサーバとは、AIエージェントが外部のツールやデータソースと安全に連携するためのオープンソースプロトコル。ここで言うMCPサーバとは、このプロトコルを実装したサイトを指し、訪れたAIエージェントに対して特定のツールやデータソースへのアクセスを提供になっていることを意味する。そのため、人々がNLWeb経由で提供しているものは、MCPを話すあらゆるAIエージェントからアクセス可能になる」という。
ナデラCEOは、NLWebが「かなり魅力的」な技術であり、それによって「あらゆるアプリ、あらゆるWebサイトにとって、インテリジェンスの創造を民主化」するものになるだろうと予想している。
少し補足すると、Webサイト側では、既に存在している商品リストや記事のデータ(Schema.orgやRSSといった標準的な形式で書かれていることが多い情報)を生かしてNLWebを導入できる。サイトの根本的な作り直しは不要であり、提供ツールなどを活用して、既存のデータとAIを組み合わせることで実現できる。
これにより、WebサイトはAIアプリのような形態に進化し、さらに外部から訪れるAIエージェントもサイト内の情報を探しやすくなる。HTMLがWebサイト作りを簡単にしたように、AI時代の「エージェント型Web」を簡単に構築する技術となる可能性が期待されている。
簡単なたとえ話をしてみよう。これまでのWebサイトは「司書のいない図書館」のようなものだった。書物は分類番号に基づいて並べられ、館内に案内表示やマップはあるものの、膨大な蔵書の中から目指す一冊を自分で探し当てなければならない。
しかしNLWebがあれば、そこに「司書」を置ける。司書は来訪者のリクエストを聞いて、適切な一冊を提案したり、その保管場所を教えてくれる。あるいはリクエストに基づいて、来訪者が必要だと思われる書籍を考え、それを全て棚から引っ張り出してきてくれたり、来訪者と一緒に研究計画を立てたりすることもできるだろう。
またこの司書は、雇った時点ですでに、他の司書たちと会話するための共通言語(MCP)を理解している。そのため働き始めたその日から、また別の図書館からやってきた司書(AIエージェント、MCPの文脈で言えばMCPクライアント)とともに、その外部の司書が別の人物から受けた依頼を達成することも可能だ。
このような状況を、図書館だけでなく、あらゆる施設や店舗で再現可能になる。そのための仕組みの一つがNLWebであり、それらが広く普及して実現できるのが、Open Agentic Webというわけだ。
Open Agentic Webは経済をも変えるか
確かにこのような状況が実現できれば、Webの姿は大きく変わるだろう。一般の消費者にとって、かつては「読む」だけだったWebの世界が、「読み、参加する」世界に変わったときに社会の在り方まで変化したように、エージェント型のWebはネット空間だけに閉じず、さまざまな社会変化も伴うと考えられる。
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小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIやメタバース、新たなサイバー攻撃など、テクノロジーの進化が止まらない。少しずつ生活の中に浸透し、その恩恵を預かれることもある一方、思いもよらない問題を生み出すこともある。このコーナーでは、さまざまな分野の新興技術「エマージング・テクノロジー」について、小林啓倫氏が解説する。
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