中国が人型ロボット開発で急成長しているワケ 日本が学ぶべきポイントは? 専門家が解説
人型ロボットの開発で中国が急成長している。野村総合研究所の李智慧氏(未来創発センター チーフエキスパート)によると、24年から25年にかけ、年間の出荷台数は推計約2800台から約2万台(受注数は含まない)に増え、世界シェアは8割を超えた。機体を製造する企業数も倍増し、200社に達したという。
なぜ中国がこれほどの成長を遂げているのか。日本が学ぶべきポイントは何か。6月23日に開催されたメディア向け講演会で、李氏が解説した。
スマホメーカーも人型ロボに参入
中国における人型ロボットの性能の進歩は顕著だ。26年の春節(旧正月)に放送された人気番組「春晩」では、ロボット開発企業である中国Unitree Roboticsの人型ロボットがアクロバティックなパフォーマンスを披露した。4月に開催された人型ロボットのハーフマラソン大会でも、人間の世界記録を突破するモデルが登場した。
製造現場や接客業務での社会実装も進んでいる。ロボット開発企業の中国Galbotは人型ロボットの店員が働く24時間営業の小売店舗を運営している。5月時点で30都市以上に展開しており、人型ロボットがコーヒーやホットスナックなどを提供する。
自動車や家電メーカーなど、異業種からの人型ロボット市場への参入も相次いでいる。スマートフォンメーカーの中国HONORは25年から人型ロボットの開発を始めた。スマホ市場が飽和しつつあるなか、スマホ開発で培ったハードウェア技術を活用している。
一方、人型ロボットを制御するAIの基盤モデルはまだ初期段階にとどまる。米スタンフォード大学の25年の調査によれば、家事などの複雑な作業をこなす性能を測るベンチマーク「BEHAVIOR-1K」で最も高いスコアを獲得したモデルでも、全体のタスクの約26%しか許容できる品質を保てなかった。完全に成功したタスクは約12%だったという。
こうした課題を乗り越えるため、中国企業はAIモデル研究と必要なデータの収集に注力している。物理的な世界を理解できるAIモデル「世界モデル」などによる性能向上を図るほか、データ収集専用の工場も建設する。開発基盤のオープン化によるエコシステムも構築し、業界全体での技術発展を進めている。
背景には「データ→モデル→応用」の循環
李氏が中国における人型ロボットの発展要因として挙げるのが、ある循環が加速的に勢いを増す「フライホイール効果」だ。蓄積したデータでAIモデルを開発し、同モデルを搭載した人型ロボットを実際に活用することで、新たなデータを収集する。このデータを活用してAIモデルを改良するという好循環が生まれている。
既存のサプライチェーンも寄与している。中国には、EV(電気自動車)やスマートフォンの製造で使われてきた部品の生産体制が整っている。特に減速機やバッテリーなどは人型ロボットにも転用できるため量産につながっている。
受容する側の差も大きい。野村総合研究所の25年の調査によれば、他国に比べて中国はAIに対する信頼度が突出して高い。日本と比較して人型ロボットを実際に利用したいとの意向も強いという。
日本が注力すべき3つのポイント
李氏は、日本もフライホイール効果を生み出すサイクルを回すことが重要と指摘する。同効果に基づき、「データ→モデル」「モデル→応用」「応用→データ」の3つに分けて注力すべきポイントを紹介した。
データ→モデルで挙げたのが、日本独自のデータの活用だ。現場の暗黙知や産業ロボットの開発・運用ノウハウなどを収集し、AIモデルの学習に適した形式に加工する必要があるとした。
モデル→応用では、人型ロボットの導入シーンの拡大を訴えた。利用する側と供給する側が連携し、新たな技術を試す環境を整備する。まず人型ロボットを社会実装し、現場起点で改善していく方針への転換を求めた。
李氏が「一つの成功事例ではないか」と評価するのが三菱電機の事例だ。同社はロボット開発企業の中国Lumos Robotics Technologyと協業し、中国国内の工場に人型ロボットを導入している。生産ラインで人型ロボットを活用したところ、2カ月弱である単一の工程を処理する時間を30秒から12秒ほどまで短縮したという。
一方、応用→データに関しては規制の必要性にも言及した。初期段階における厳格な規制は技術の発展を遅延させる懸念はあるものの、人に危害を加えるような事故を防ぐための業界標準やルール作りとセットで開発を進めることを推奨した。
中国でも人型ロボットの社会実装と同時に、技術的な基準を段階的に策定している。安全性も重視して国家的な枠組みを作成していると補足した。
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