「私は詐欺師の時間を浪費させ、弱者に接触できないようにさせた。それがポイントだ」とカーファー氏は言う。しかし自身も40分の時間を無駄にした。そこで思い付いたのが、自然言語処理を使ってAIに応対させ、詐欺師と会話させるというアイデアだった。「この新技術を使って詐欺電話ビジネスを破綻させ、採算が合わないようにさせたい」。
カーファー氏のチームはまず機械学習や自然言語処理を使って詐欺電話の内容や被害者をだます手口を分析し、典型的な詐欺の「台本」を特定した。
次に実際にかかってきた詐欺電話の会話や、詐欺メールの文面、SNSでのチャット記録などをAIに学習させて、そうした会話に似せた会話を生成できるようにした。
自然言語処理やAI音声クローニング技術の進化により、流ちょうに話ができて特定の人格になり切ることができ、一貫性のある会話を続けられるAIエージェントを開発することができたとカーファー氏は言う。
「われわれが開発したAIチャットbotは詐欺師をだます。だませそうな相手と話していると思い込んだ詐欺師は、botをだまそうとして時間を費やす」
英紙Guardianによると、オーストラリアの電話会社は20年12月以来、20億件もの詐欺電話をブロックしている。もしそうした電話をApateに転送して時間を浪費させることができれば、詐欺ビジネスは成り立たなくなるとカーファー氏は期待する。
現在はさまざまな年齢や人格の人物を想定して、イギリス英語やエジプト系の英語などさまざまな言葉を話すチャットbotのテストが行われているという。会話を続けながら詐欺電話に関する情報も収集し、さらなる対策に役立てたい考えだ。
いずれ詐欺グループ側が対抗して独自のAIを開発し、電話会社のAIと会話する展開もあり得るとカーファー氏は想像し、「詐欺チャットbotが本物の人からお金を盗む代わりに詐欺対策チャットbotと会話するようになれば、大きな勝利だ」と話している。
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