調査会社の英Gartnerは6月10日、世界のデータセンターの電力消費に関する予測を発表した。2026年の電力消費量は、前年比26%増の565テラワット時(TWh)に達するという。
「AI処理に対する需要の急増が、これまでにないデータセンターの電力需要の増加を引き起こしている。(中略)データセンターの電力確保がグローバルなAI競争において規模拡大と利益率維持の新たな主戦場となっている」――同社のリンラン・ワン氏(ディレクター アナリスト)はこう分析する。
データセンター全体に占めるAI用サーバの電力消費は、2026年中に約31%になると同社は推計。2027年には、従来型サーバの電力消費量を上回ると予測する。日本国内のデータセンターに限っても、同様の傾向があるという。
こうした中、同社は「データセンター建設需要に対して送電網から供給される電力は不足し、全てのユーザーに影響が及ぶ」と指摘。データセンター事業者のインフラ担当者に対して、ワン氏は「効率向上への投資や送電網へのアクセス確保を優先する必要がある」と提言する。
国内の状況について、ガートナージャパンの山本琢磨氏(ディレクター アナリスト)は「国内では電力供給の遅れがデータセンター建設に影響を与えている。主な要因は発電能力の不足ではない」と説明する。では、真のボトルネックはどこにあるのか。
山本氏は「送電設備の整備が追い付いていないこと」が、データセンターの建設に影響を与えていると解説する。
国内のデータセンターを巡っては、強固な地盤やアクセスの良さから、千葉県印西市・白井市エリアにデータセンターが集中している。特に印西市は「データセンター銀座」と呼ばれることもある。
資源エネルギー庁よると、同エリアで電力の送配電を担う東京電力パワーグリッド(東京都千代田区)に対して「供給可能量を超える需要の申し込みが来ている」という。追加工事が必要な場合は「数年以上の工期を必要とする場合も存在」すると報告した(資源エネルギー庁「電力ネットワークの次世代化について」より)
東京電力パワーグリッドは2025年8月時点で、首都圏でデータセンター用電源として累計約1520万キロワット(kW)の容量仮確保を受け付けたと説明した(「東京電力パワーグリッド株式会社の現状と今後について」より)。
同社によると、経済産業省による「半導体・デジタル産業戦略」の改定を受けて、2024年度からデータセンターや半導体工場の新設・増設が活発化しているという。同社は「電力需要増に大きく影響する」という見通しの下、需要に対応するために変電所新設などの増強工事を予定している。
AI用データセンターの電力を重視・確保する動きは、世界中で進んでいる。米国では、オハイオ州に大型ガス火力発電所とAIインフラを建設するプロジェクトが3月に始動。発電所の発電容量は10ギガワットで、東京都の1時間当たりの平均電力需要を上回るという。
同プロジェクトは米国エネルギー省が主導するもので、参画する企業連合「ポーツマスコンソーシアム」の事務局をソフトバンクグループが務める。日本からは住友電気工業やTDK、東芝などが参加し、累計投資額は333億ドル(約5兆円)に上る。
AI市場が拡大を続ける中、電力不足がブームに水を差すのか。AIが産業や業務を支える“社会インフラ”になりつつある今、官民を挙げた対応が求められそうだ。
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