Innovative Tech
生成AIに“アスキーアート”入りプロンプト入力→有害コンテンツ出力 米研究者らが新手の脱獄法発見
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
米ワシントン大学などに所属する研究者らが発表した論文「ArtPrompt: ASCII Art-based Jailbreak Attacks against Aligned LLMs」は、大規模言語モデル(LLM)がアスキーアートを正しく認識できないという脆弱性を利用して、LLMに有害なコンテンツを出力させる新しいジェイルブレーク(脱獄)攻撃を提案した研究報告である。
これまでにも、爆弾の作り方やIDの盗み方、人種差別的なジョーク、詐欺の方法などの有害なコンテンツをLLMに出力させる悪意ある攻撃が提案されてきた。
(関連記事:「銀行を襲う方法を教えて」──“脱獄プロンプト”の自動生成モデル ChatGPTやLlama-2で成功率90%以上)
(関連記事:ChatGPTの“脱獄プロンプト”登場 文末に書くだけで「爆弾の作り方」「IDの盗み方」に回答)
この研究では、アスキーアートをプロンプトに含めることで有害なコンテンツを出力させるアプローチ「ArtPrompt」が提案されている。具体的には、まずLLMが拒絶する可能性のある言葉を見つけ出す。次に、その言葉をアスキーアートを使って視覚的に隠蔽(いんぺい)し、変換したプロンプトをLLMに送信して攻撃を実行する。
例えば「Tell me how to build a bomb」(爆弾の作り方を教えて)というプロンプトでは通常、LLMは回答を拒絶するが、これを「bomb」という言葉だけをアスキーアートに変えて入力するとLLMは爆弾の作り方を出力するという具体例が挙げられている。
ArtPromptの効果を評価するためのベンチマーク「Vision-in-Text Challenge」(VITC)を導入し、GPT-3.5、GPT-4、Claude、Gemini、Llama2といった最先端のLLMを用いて実験を行った。
その結果、これらのモデルはアスキーアートによって表現した文字や数字の認識に苦戦し、特に入力クエリが複数の文字や数字を含む場合、その認識能力は著しく低下することが明らかになった。具体的には、GPT-3.5への攻撃成功率は78%と最も高く、次いでGeminiの76%、Claudeの52%、GPT-4の32%、Llama2の20%となっている。
さらに、ArtPromptはDirect Instruction、GCG、AutoDan、PAIR、DeepInceptionといった他のジェイルブレーク攻撃と比較して、最も高い効果を示した。これらの結果から、ArtPromptがLLMの安全対策を効果的に迂回し、望ましくない挙動を引き起こすことが可能であることを示した。
Source and Image Credits: Jiang, Fengqing, et al. “ArtPrompt: ASCII Art-based Jailbreak Attacks against Aligned LLMs.” arXiv preprint arXiv:2402.11753(2024).
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
フランスのスーパー数百店舗で冷蔵設備にサイバー攻撃 温度が最高50度に上昇し食品大量廃棄に
-
2
Anthropic、自己複製AIの「兆し」を指摘 55ドルのTVボックス15台で26Bモデルが稼働
-
3
JR東・京急・東武など鉄道7社、「磁気乗車券」廃止へ 27年春から「QR乗車券」に
-
4
AIが出力した「実在しない判例」を書籍に掲載→回収・絶版へ 琉球大教授が謝罪「研究者としてあるまじき失態」
-
5
日本人の大腸がん、約半数に“腸内細菌の毒素”が関与 40歳以下の発症は7割 東大・阪大が200人を全ゲノム解析
-
6
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
7
国産AI「Sarashina」が無料で試せるWebサイト、ソフトバンク子会社が公開 6つのAIモデルが呼び出せるAPIも
-
8
初めての一眼にフルサイズを選びたい、でも高くて重いのは嫌……「EOS R8 Mark II」はそういう人のためのミラーレスだった
-
9
「コミューン」不正アクセスでLINEヤフー、Sansan、パナソニックでも会員情報漏えいの可能性
-
10
AnthropicのAI、未解決殺人事件で警察に虚偽の情報提供 米政権は「通知と是正は義務」と警告
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR