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地デジのHDTV化を担う? 純国産HDノンリニアシステム登場(2/2 ページ)

» 2004年01月26日 18時10分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 コーデックはフレーム内圧縮なので、当然フレーム単位の編集に対応できる。HDCAMからキャプチャーした素材を再生してみたが、クオリティ的にも問題ない出来であった。

・キャプチャー

 ノンリニアシステムの難点は、キャプチャーに時間がかかることだと指摘されているが、HDWS1000ではキャプチャーしながら直接タイムラインに編集していける機能を備えている。収録テープ1本だけといった短い素材の編集では、従来のリニア編集と同じような感覚で行なうことができる。この機能は他のノンリニアシステムでも採用され始めている、比較的新しいトレンドである。

・リアルタイム処理

 エフェクトや合成などは、リアルタイム処理をベースにしている。現状では2ストリーム+1タイトルがリアルタイム処理可能。同社では今後CPUの性能アップにあわせて、これらの制限も徐々に緩和されていくとしている。ちなみに現状のHDWS1000に採用されているのは、Intel Xeon/3.0GHzのDualである。

 またトランジションやカラーコレクション、キーイングもリアルタイムとなっている。だがどれの組み合わせがリアルタイムで再生できるかは処理の重さによるので、いくつかダブっても案外リアルタイムで行ける場合もあれば、2ストリーム+1タイトル内でもリアルタイムで行けない場合もある、といった具合だ。リアルタイムで行けない部分はそこだけレンダリングすることになるのは、従来のノンリニアシステムと変わりない。

・ストレージ

 ベーシックなシステムでは、キャプチャーのためのストレージは内蔵HDDを使う。コンテンツ用に320GバイトのHDDを搭載しており、HD素材約5時間分が収録できる。

 ただ素材が5時間では、取材ものなら30分番組が1本できるかどうかといったところだろう。これ以上のものでは、外部ストレージが必要となる。インタフェースとしては、Ultra320 SCSI、2GbpsのFiberChannelを装備している。

どういった使い方ができるか

 多くの編集用システムでは、機能が少ないため「報道用」として売ろうとするのをよく見かける。カノープスもまずは報道用途をターゲットにしているようだが、おそらくそれはうまくいかないだろう。

 筆者の経験からすれば、番組と報道はそもそも編集スタイルが全然違うし、編集マンの気質も全然違う。報道には報道のニーズがあり、番組編集システムの簡単なもの=報道編集という図式は成り立たないということが、なかなか理解されていないのが現状だ。

 まず報道では、ジョグ・シャトルコントローラなしでは話にならない。ミキサーもハードウェアのフェーダーが必要だ。次に多くの報道センターでは、既にビデオサーバ送出の導入が始まっている。ネットワークによるコンテンツシェアリングやビデオサーバへの高速転送、番組制作支援システムや送出システム、プロンプターなどとのリンクが必要だ。もはや報道編集はチームで動くものであり、SAN(Storage Area Network)につながらならなければ存在価値がないという時代なのである。

 筆者が考えるHDWS1000の使いどころは、別にある。

・仮編集

 まず一つ、バラエティ番組などの仮編集にどうだろう。本編集は別にやるとして、ある程度のところまでHDWS1000で作り込むという手法だ。これは現在のSDノンリニア編集でもよく行なわれる方法で、「オンライン・オフライン編集」と呼ばれている。つまり気分的にはオフラインなんだけど、作ったコンテンツはそのままオンラインに利用するよ、というラフなスタイルだ。

 ただし現状はEDL出力やメタデータ管理機能がないので、割と旧態然とした使い方になってしまうだろう。

・ドラマ編集

 次の可能性は、ドラマ編集だ。かつてSDのノンリニアシステムの黎明期に、いち早くオンライン編集機として利用し始めたのがドラマ制作班であったという経緯がある。ドラマの本編ではさほどの合成は必要ないし、撮影にはちゃんとVEが付くので、カラーコレクションも通常のロケほど必要としない。またドラマ編集ではほぼ全カット、スプリット編集を行なうわけだが、その使い勝手も悪くない。

 オーディオが2chなのがイタイが、編集はそれでもいいというケースもあるだろう。

・テロッパー

 三つめの可能性は、テロップ入れマシンとしての活用である。現在バラエティでは、タレントのしゃべりに合わせてテロップでフォローするのが暗黙の了解となっている。これにかかる時間は大変なもので、本編編集とほぼ同じぐらいの時間をかけてテロップを入れているが、最近ではノンリニアを使って、これを効率化しようという動きになってきている。

 HDWS1000はInscriberの「Title Motion HD for EDIUS」を搭載しており、通常のテロップ入れなら問題ないだろう。現在HDのノンリニアシステムがほどんどないため、そういう使い方はニーズがありそうだ。またTitle Motion HDもカノープスがかなり手を入れているとあって、日本語フォントで問題がなさげなのもポイントだ。

 あとは「テープからキャプチャ」+「テープへの書き戻し」の時間をかけてでも、HDWS1000でテロップを入れるだけのフレキシビリティとクオリティを感じるかどうかだろう。

 もちろんこれ以外にも、「これで十分」という仕事は世の中にたくさんあるはずだ。そういう仕事を持っている人達にいかにこの製品を周知していくか、それがカノープスに課せられた今後の課題となるだろう。

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