ITmedia NEWS >

IT市場は宝の山、目を輝かせるマイケル・デルe-Day

» 2004年03月26日 23時53分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「90%のスケジュールは今までどおり変わらないだろう」── 7月に予定されているCEO退任について聞かれたDellの会長兼CEO、マイケル・デル氏はそう話した。

 3月26日、5日間で5カ国を回るという恐ろしいアジアツアーで東京に立ち寄った彼は、都内のホテルで来日記者会見を行った。液晶テレビの市場投入やCEO退任など、彼をめぐって話題には事欠かない。それを目当てに100人を超える報道陣が詰め掛けたが、5月以降に展開される新たなエンタープライズ戦略の披露も兼ねていて、彼もどちらかというとそれを強調したい様子だった。

「今回はアキバでショッピングする余裕もない」とぼやいたデル

 サーバ、ストレージを中心とする同社のエンタープライズ事業は、例えば、PowerEdgeサーバの出荷台数がFY04の第4四半期、前年同期比40%の大幅増を達成するなど、同社の成長を牽引している。日本でも昨年、IAサーバ市場でシェア2位となったデルだが、記者会見に同席した日本法人の浜田宏社長は、「調査会社の発表が待ち遠しい」とし、早くも首位に立つ勢いだ。

 好調な業績が続く中、CEOの座をケビン・ロリンズ社長兼COOに譲るというニュースは衝撃的だったが、デルは「長いあいだケビンと一緒に会社を運営してきた。次期CEOに彼を指名したのは、彼の能力を正式に認めたもので、会社にとっては健全なプロセスだ」とし、これまで報じられてきたのと同じ内容の発言を繰り返した。

 まだ、39歳という若さもあって、新たな人生設計があるのではと勘ぐってしまうが、「CEO退任後も私は100%Dellのために働く」とこれまでどおり変わらないことを強調した。

リーダーシップに課題

 しかし、1997年に70〜80億ドルに過ぎなかった同社の売り上げは、今年1月末に締めたFY04通年で414億ドルに達した。

 「それだけでも大きなチャレンジだったが、今後もどのようにして組織を拡大し、スキルを育成していくか、しかもスピーディーにそれを行っていかなければならない」とデルはリーダーシップの課題を口にした。

 2002年4月には、売り上げを当時の300億ドルから5年足らずで600億ドルまで引き上げる大胆な「売り上げ倍増計画」も発表している。

 Dell(ダイレクト)モデルは顧客や株主らに大きな価値をもたらしているが、その企業理念である「Soul of Dell」が語られることはあまりない。この「デルの魂」は、顧客だけでなく、パートナーともダイレクトな関係を築き、社内にあっては人材育成にコミットするもので、勝利を収める情熱、ウイニングカルチャーの基礎だとされている。

 今回の記者会見では「ウイニングカルチャーを育成していくことが課題」と、引き続き会長として同社を率いる彼の今後の役割を示唆する発言もしている。

 20年前、テキサス大学オースチン校で大学生が始めたビジネスは、米国PC市場で30%のシェアを占めるなど、驚異的な成長を遂げた。ある種の達成感が生まれても不思議はないが、デルはIT市場には巨大なビジネス機会があると話す。

 2月中旬、デルとロリンズがそろってインタビューに応じた際にも、「PCとサーバだけでも成長の余地は十分あり、売り上げ600億ドルの達成は可能だ」(ロリンズ)とし、中核事業の成長に貢献しない独立したイニシアチブに消極的な姿勢を示した。

 この日、液晶テレビについて繰り返し質問を受けたデルも、「われわれはテレビのビジネスをやろうというのではない」とキッパリ。音楽や映像に代表されるように、さまざまなメディアがデジタル化すれば、PCはそれらを扱う中心的な存在になることができる。「Dellの液晶テレビは、いわばマルチファンクションディスプレイという新しい市場を狙っている」とデル。

 ITの世界市場は2006年になると総額8000億ドルまで膨らむとみられている。PCの世界シェアは20%に達しておらず、IAサーバのそれはさらに低い。ストレージ、ネットワーク機器、サービスなどの事業もまだスタートしたばかりだ。FY04の売上高を当てはめてみるとIT市場全体の5%に過ぎない。

 「劇的な成長の可能性がある」とデルは目を輝かせた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.