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コラム
» 2004年02月24日 18時49分 公開

e-Day:「標準化のS字曲線」はDellの金太郎飴

2月中旬、テキサス州オースチンの本社キャンパスを訪れ、Dell創業者のマイケル・デルをはじめ、多くの同社幹部に話を聞いたが、一貫していたのは、気持ちいいほどの「割り切り」だ。

[浅井英二,ITmedia]

 Dellの強みは、そのユニークな「Dell(ダイレクト)モデル」にある。顧客の声を背景に、標準化とコモディティ化を加速させ、一気に勝負に持ち込む。ボリュームによるスケールメリットと高い生産性によるコスト削減によってプライスリーダーとなり、ライバルたちより低い価格でも利幅をきっちりと確保する。勝利の方程式だ。

ボードルームで取材に応じるデルCEO(右)とロリンズCOO

 2月中旬、テキサス州オースチンの本社キャンパスを訪れ、Dell創業者のマイケル・デルをはじめ、多くの同社幹部に話を聞いたが、一貫していたのは、気持ちいいほどの「割り切り」だ。

 彼らは必ずといっていいほど、「標準化とコモディティ化のS字曲線」を持ち出す。技術は標準化が進展するのに伴い、右肩下がりでそのコストが下がっていくことを示すチャートだが、当然ながらコストは同じペースで落ちていくわけではない。独占的で高価な技術は標準化が始まってもなかなか価格が下がらない。従ってチャートは初めはなだらかだが、ある時期を過ぎると急落する。正確には“S字”カーブではないのだが……。

 具体的な技術を見ていくと分かりやすいだろう。Dellのチャートでは、「独占的技術」「標準化中の技術」「完全に標準化された技術」に大きく分類される。ここ数年、標準化が進んでいる技術は、2ウェイおよび4ウェイのIAサーバを最右翼に、ストレージのNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)、そしてIAベースのHPCC(High Performance Computing Cluster)が続き、チャートにもこれらが順にドットされている。2ウェイおよび4ウェイのチップセットはIntelから供給されており、ほぼ標準化されたとみていいが、それ以外は装置同士を接続する技術がいろいろあり、いまだに定まっていないのを反映したのだろう。

 まあ、チャートというのは、そもそも自社に都合良く描かれているものだ。むしろ、肝心なのは、自社の参入によって一気に標準化を加速し、ボリュームと高い生産性で他社を圧倒できるという自信がそこから見て取れること。標準化されたコモディティでこそ、Dellモデルの価値が最大化されるのだ。

 クールな西海岸のベンダーであれば、ロードマップはたいてい右肩上がりで描くのだが、S字曲線で右肩下がりというのも面白い。

コアはあくまでPCとサーバ

 NAS、SAN、HPCCを見ても分かるが、Dellが新たに参入しているのは、業界標準ベースのPCおよびサーバという同社の中核事業に大きく貢献する分野に限られている。

 「売り上げ600億ドル達成の勝算? PCとサーバだけで十分可能だ。周辺事業にも大きな機会があるが、中核事業の成長に貢献しない独立したイニシアチブは考えていない」と話すのは、社長兼COOとしてDellを切り盛りするケビン・ロリンズ。

 順風満帆、絵に描いたようなアメリカンドリームを実現させたマイケル・デルだが、1991年にリテールチャネルへ進出したのがたたり、1992年には財務的危機に見舞われている。

 「あまりの急成長と手を広げ過ぎたことから困難に陥った。しかし、その過ちから何が価値があり、何が重要なのかを学んだ。短期間で立て直せたのは、困難な時期に入社して助けてくれたケビンのおかげだ」とデルは当時を振り返る。Bain&CompanyのコンサルタントだったケビンがDellを担当したのがきっかけだった。

デルサービスも同じ原則

 S字曲線で語られるのは、製品だけではない。サービスもそうだ。

 メインフレームの保守のようなプロプライエタリなサービスは、特定ベンダーからしか提供されずそれだけ高額だが、標準化が進んだ技術のための標準化されたサービスであれば、お金はあまりかからない。

 北米のサービス事業を担当するゲーリー・コットショット副社長兼GMは、「ハードウェアプラットフォームと同じ原則。2年前、SANのネットワークデザインと導入は8日間、1万8000ドルかかったが、今ではプロセス改善と標準化されたツールのおかけで2日半、9000ドルで済む」と話す。

 当然ながら研究開発戦略もこのS字曲線で語られる。徹底して「金太郎飴」だ。

 標準化の最中であるNAS、SAN、HPCCでは、ストレージのEMCやクラスタ接続のMyricomらとの協業によって顧客による採用を加速させ、ほぼ標準化が完了しつつある2ウェイ、4ウェイサーバとなると、自社でテクノロジーを(例えば、Intelから調達して)組み込むのがDellの研究開発スタイル。年間5億ドルという競合他社と比較して控えめな研究開発費も実際に顧客の役に立つ標準ベースの技術に重点的に注ぐ。研究開発というよりもむしろ「開発組み込み」と呼んだ方がいいかもしれない。

 「技術はそれ単体では価値がない。顧客に納入されて初めて価値を生む」と話すのは、サーバとストレージのエンジニアリングを担当するラス・ホルト副社長。

 昨年秋、サンフランシスコのOracleWorldでデルが「この業界は研究開発に過剰投資している」と基調講演で話したことがセンセーショナルに報じられ、Sunのスコット・マクニーリー会長兼CEOが早速かみ付いた。

 「ITは10年たっても変わらないクギじゃないんだ。例えば、プロセッサは常に進化している。われわれは自社を差別化すべく今後も開発投資に力を注いでいく。Dellは販売チャネルに過ぎない」(マクニーリー)

 しかし、Dellのホルト氏は、「Sunの研究開発投資はユーザーに価値をもたらさなかった。だから彼らも(AMD Opteronなど)業界標準ベースのアプローチを取り始めた」と意に介さない。

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