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コンテンツ保護の“日米差”はどこからくるのか(1/3 ページ)

» 2004年06月14日 10時03分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 Winny作者の逮捕をきっかけとして、日本ではコンテンツのあり方に関する議論が高まってきた。だがそれも、作者保釈をもって、なんだか沈静化の傾向にあるように思う。

 保釈になることを無罪放免であると勘違いしている人もいるようだが、これは逮捕から裁判に至るまでの、単なる一プロセスにしか過ぎない。ニュースというメディアとしては何か進展がない限り動けないわけだが、公(おおやけ)の場でコンテンツのあり方を議論をしていかなければならないのは、むしろこれからなのである。

 ちょっと前の話になるが、5月21日、筆者は米Intel社の副社長、ドナルド・ホワイトサイド(Donald M. Whiteside)氏にお話しを伺う機会を得た。氏はIntelにおいて、著作権関連の責任者という立場にある。IT系ニュースサイトでIntelのインタビューといえば、普段はプロセッサやチップセットの話になるところだが、こういう話を伺えるのは珍しい。

米Intel社副社長、ドナルド・ホワイトサイド氏

 さらにもう一人、Intelでデジタルホームコンテンツの著作権関係で実務を担当している、ジェフリー・ローレンス(Jeffrey T. Lawrence)氏にも同席頂いた。金髪の長い髪を後ろで三つ編みにしたユニークな風貌の同氏は、日本に数年間住んだ経験もあり、日本通でもある。

著作権関係の実務を担当する、ジェフリー・ローレンス氏

 今回は、このインタビューの模様を中心に、日米のコンテンツサービスの差などを考えてみたい。

著作権と社会的啓蒙

 一般的にはハードウェア会社だという認識のIntel社だが、そういう彼らは実際に著作権に関してどのような活動をしているのだろうか。まずそのあたりから語ってもらおう。

ドナルド・ホワイトサイド氏:「Intelというのは、各種特許といった知財をベースに成り立っている会社であると言えるでしょう。ですから当然、他者の知財も尊重しなければなりません。われわれの重要な業務として、セキュアで生産性の高い環境を提供することが挙げられます。例えばコンテンツが配信されるときに、プロテクト技術をどう応用するか。人の資産を保護するため、肯定的にテクノロジーを利用できるかが重要です」

 「コンテンツホルダーからは逆に、コンシューマーのふるまいを取り締まるようなテクノロジーをIntelに開発してもらいたいと期待されている部分があります。ですが啓蒙された社会の中では、『テクノロジー』が『個人の責任感』に取って代わることはできないと考えています」

 「啓蒙された社会」というキーワードは、そもそも著作権とはどういう権利なのかという、「そもそも論」を考えるヒントになる。

 現在われわれが購入できるコンテンツはすべて、コピーによって成り立っている。音楽CDはマスターテープから、DVDはマスターフィルムから、本は版下からのコピーだ。これらはわれわれがその内容物を、物理的メディアという入れ物に入れて持って帰ることでお金を払う。払ったお金は、いろんな流通過程で必要経費として取られつつも、最終的にはその作品を作った人に、対価という形で渡される。

 説明すれば、小学生でも理解できる概念だ。つまり“オリジナルを作った人にお金を払わないと、作った人が報われないでしょ”というのが、著作権の最もベーシックな理屈だ。その社会的啓蒙は、問題なかろう。まずここが第1ステップ。

 第2のステップが、放送だ。

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