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日本人はなぜオタクとなり得たか(2/3 ページ)

» 2005年03月07日 10時11分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 床が抜ける例のように、エスカレートしていく状況を自分で止められない、あるいは他人が認めない価値観を自分の世界内で構築するというのは、基本的に子供と同じなのではないだろうか。いや、なにも苦言を呈しているわけではない。この「大人になっても幼い」というのは、モンゴロイドの特質であるとする学説がある。これによっていくつかのオタクの行動原理を説明してみるのも、面白い試みかもしれない。

われわれは子供のまま大人になる

 「ネオテニー」が人類進化の鍵であるという学説を唱えるのは、北海道大学医学研究科教授の澤口俊之氏である。ネオテニーというのは、日本語で言えば「幼形成熟」、すなわち幼生の特徴を持ったまま大人と同じ状態になることを指す。極端な例で言えば、おたまじゃくしのままで繁殖できるようなものだろうか。

 ペットとしてはウーパールーパーで知られるアホロトールも、本来はメキシコサラマンダーというイモリの一種になる過程の幼生のままで定着した、ネオテニー化の例である。もっと身近なところでは、犬はオオカミがネオテニー化したものであるという。

 澤口氏の説を借りれば、もともと人間の原種は東アフリカのネグロイド(黒人)で、それが欧州に渡ってネオテニー化したのがコーカソイド(白人)、さらにコーカソイドからネオテニー化したのがモンゴロイドであるとしている。モンゴロイドにはいくつかの系統があり、日本人の種の源流は、シベリアに進出したモンゴロイドである、ということだ。

 むろんこの学説には、反論の余地があることは承知している。人類起源説にはアフリカ一点説と世界同時発生説があり、日本人の起源にしても北方伝来説と南方伝来説がある。ここでは特にその是非を問わず、「日本人はネオテニー化した人類」という仮定の元に考えてみる。

 ネオテニー化した要因は、寒さに対する耐性を高めるという環境適応のためであるが、ネオテニー化したこと自体のメリットは、精神的にも肉体的にもいつまでも若いということである。

 肉体的な面に関してはまたいずれ考察するとして、ここではオタク的な行動原理をひも解くのに、精神的な部分に着目してみよう。たとえばネオテニー化したオオカミである犬に芸を仕込みやすいのは、いつまでも好奇心が旺盛で、変化を受け入れることができる柔軟な脳を持っているからだ。小型犬が歳を取ってもいつまでも子犬のようにせわしないのは、こういう点からも説明できそうである。

 たとえばオタク的行動の原則が子供のような「興味本位」だと定義するならば、30過ぎても40過ぎても精力的にオタクの状態を維持できるのは、精神が大人へと発達する前の滑走段階が長いからだと考えることはできないだろうか。

オタク化が可能なもう一つの要因

 ネオテニー化がオタクの要因だとするならば、中国人も韓国人もオタクにならなければならない。だがオタクが日本で発生したからには、それ以外の要因とセットになっていると考えるべきだろう。逆にその他の条件が満たされたとき、それらの国もオタク化する可能性があるということにもなる。

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