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Lenovo、ノートPCの発火問題を調査――リコールは不可避との声も(2/2 ページ)

» 2006年09月25日 14時14分 公開
[John G. Spooner and Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK
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 Dellの説明によると、オーバーヒートや発火につながる不具合が生じるためには、複数の要因が重なる必要があるという。

 リチウムイオンセルの外観はスープ缶のような形をしているが、その内部はロールケーキのようになっている。2枚のコーティングされた金属箔が絶縁層によって分離され、コイル状に巻かれているのだ。このコイルは金属缶に入れられ、金属缶は電解液で満たされた上で封印される。

 「外部からの加熱や過電流による温度上昇、過充電、コイル層間のショートなどが原因でセルが故障する可能性がある。リコール問題につながったのはコイル層間のショートだ。極めてまれだが、製造工程で混入する金属粒子がセル内でショートを引き起こす可能性があり、これが発火につながる」――Dellの技術担当副社長、フォレスト・ノロッド氏は8月22日、同社の「Direct2Dell」ブログへの投稿でこのように説明している。

 しかし、この不具合には多数の要因が関連しているため、「当社の場合は問題がないと断言する企業があるとすれば、それは実証されていないことを主張していることになる」とケイ氏は話す。

 だが、すべてのThinkPad(ならびにすべてのDellおよびAppleのノートPC)が、ソニー製のバッテリーセルを採用しているわけではない。ThinkPadの中には、三洋電機などのメーカーのバッテリーを搭載しているものもある。ソニーは世界第2位のバッテリーメーカーで、1位は三洋電機である。

 このため、Lenovoがどのような対策を講じるにせよ、その範囲は比較的限定されたものとなる可能性がある。

 カリフォルニア州サンマテオにあるIDCのアナリスト、リチャード・シム氏によると、今後さらにリコール問題が出てきても不思議ではないという。

 シム氏の推定によると、問題が起きる可能性があるソニー製セルは、まだ100万個ほど出回っている。

 大手コンピュータメーカー各社は、同じサプライヤーから部品を調達する傾向にあるため、「あるメーカーの製品で問題が発生したら、ほかのメーカーでも問題が起きる可能性がある」と同氏は指摘する。

 AppleおよびDellと共同で調査を進めているConsumer Product Safety Commission(CPSC)は8月24日の時点で、ソニーやほかのコンピュータメーカーが関連した今後のバッテリーリコールの可能性についてコメントを避けていた。

 しかし同日にソニーが発表した声明では、今後さらにリコール問題が起きることはない見通しだとしていた。

 「当社の顧客の満足がいくよう、この問題に対処した」とソニーは8月24日付の発表文の中で述べている。

 さらにソニーは、「AppleおよびDellの製品で起きた異物混入問題に対処し、安全性とセキュリティを改善するために、バッテリー製造プロセスに予防対策を導入した」と発表した。

 バッテリーパックのリコール問題は各方面に影響を及ぼしている。Virgin Atlanticなどの航空会社は、客室乗務員によるバッテリーのチェックを受けなければ、DellまたはApple製のノートPCの使用を制限するという対策を打ち出した(関連記事)Virgin AtlanticのWebサイトによると、リコール対象となるバッテリーを搭載したマシンを持っている乗客は、電源コンセントが利用可能であれば、バッテリーパックを外したノートPCを使用することができるとしている。

 しかし、今後のリコール問題の可能性が、活況を呈するノートPC市場を冷え込ませることはなさそうだ。

 ニューヨーク州パーチェスにあるNPD Groupのアナリスト、スティーブン・ベーカー氏は、バッテリーのリコールがノートPC市場全体やLenovoに長期的な影響を与えることはないとみている。

 「Lenovoの顧客は企業ユーザーが中心であり、こういった企業ではきちんとした対策を用意している。大手企業はコンシューマーとは大きく異なる。HPやDellのようなタイプのメーカーであれば、コンシューマー向けの売り上げに影響する可能性が高いかもしれない」とベーカー氏は話す。

 CPSCとソニーのコメントはまだ得られていない。

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